研修レポート ― 派遣社員向けプランナー研修<入門編>を実体験!(後編)

派遣社員向けプランナー研修<入門編>を実体験!(後編)

一般的に派遣社員は、社員として働いている人と比べると、派遣先で社内研修を受ける機会が少なく、派遣期間が終わると次の会社に移るため、スキルアップを図ることが難しいのが現実でしょう。
この問題を解決するため、シリコンスタジオエージェントでは、登録いただいているクリエイター(派遣社員)向けに、さまざまな研修を行っています。今回は、数多い講座の中から「ゲームプランニング講座<入門編>」を選び、ゲームの記事を多く手掛けているライターが現役プランナーの皆さんと一緒に受講してみました。

特集・企画記事 ― 派遣社員向けプランナー研修<入門編>を実体験!

コンシューマーゲームにおけるレベルデザイン

午後最初の講義のテーマは「プランナー業務(レベル/UI/その他)」です。近年、よく耳にする「レベルデザイナー」という言葉ですが、貫田氏によると(コンシューマーゲームの開発現場では)「ゲーム内空間と、その“流れ”や“段階”を踏まえた“ゲーム体験”の設計者」ととらえれば良いとのこと。
さまざまな素材をつないで、ひとつのまとまりにする仕事と置き換えることができるそうです。ちなみに、レベルには「面」という意味があり、ゲームにおける「マップ」「ステージ」「空間」を指しています。貫田氏は、遊園地のガイドマップを例に「ここは◯◯を体験」「こちらのエリアは××がテーマ」ということを決めていくのが、プランナー業務の一環であるレベルデザイン(レベルデザイナー)の仕事であると説明しました。レベルデザインは、次のような流れで行われます。

<レベルデザインの流れ>

  1. 企画・仕様作成
  2. グレーボクシング
  3. アートワーク追加
  4. 調整

「企画・仕様作成」では、ゲーム内のひとつのステージ(エリア)のコンセプトやテーマ、ゲーム性を決めます。プロットやレベルダイアグラム(俯瞰図)を準備したり、イメージボードを描いてもらうためのアート資料をそろえたりしていきます。

次の「グレーボクシング」は、シンプルな形状のパーツ(立方体などの3Dデータ)で仮のマップを作成します。例えばダンジョンであれば、どのような構造にするのか、敵やアイテムの配置をどうするのかなどを決めていきます。このときに使用する3Dデータが、灰色の箱状(グレーボックス)であることから、このような名前で呼ばれているそうです。

グレーボックス内でキャラクターを実際に動かすことでバランス調整を行い、配置などが決まったら、データをアーティスト(デザイナー)に渡してブラッシュアップしてもらう「アートワーク追加」の段階に移ります。ライティング背景のディティールによって難易度や導線、雰囲気が変わることもあるので、そのときは構造や配置を見直す必要があります。

最後の「調整」は、実機でプレイしながら行います。「ユーザーに(そのレベルで)体験してほしい要素が不足していないか」「バランスはとれているか」「CPUやGPUなどに余計な負荷がかかっていないか」といったことをチェックします。このとき、ほかの開発者が遊んでいる様子を確認すると、自分では気付かなかった発見があるそうです。

プレイヤーに出来を評価されないことが正しいUIの在り方

レベルデザイン同様、重要視されているのが「UI (ユーザーインターフェース)」です。このUIを設計することもプランナーの仕事のひとつで、具体的にはゲーム中のあらゆる画面や表示物の設計を行うことになります。UIを「プレイヤーに最も近い要素」と言う貫田氏は、プレイヤーに出来を評価されない(遊んでいて意識されない)UIこそ、正しく成功したUIであると考えているそうです。

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UIは「HUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)」「メニュー画面」の2種に大別されます。HUDは、ゲーム画面の前面に表示されるもののことで、例えばキャラクターの名前や体力などのステータス、装備やアイテムの状態、現在地がわかるマップなどが含まれます。多くのゲームで2D表示となりますが、3D表示を行う作品も存在するなど、いまだに発展し続けている部分でもあり、それだけにプランナー(UIデザイナー)の腕の見せ所でもあるといえるでしょう。
一方のメニュー画面は、通常のプレイ画面から切り替えた(遷移した)画面のことで、各種メニュー表示やキャラクターのパラメーター詳細、拡大表示したマップ、システム関連など、多岐にわたります。こちらも、2D表示で作られることが基本となっています。

プレイヤーがストレスを感じないUIが良いとする貫田氏ですが、あえてプレイアビリティよりも“体験”や“キャラクター性”を重視して設計したUIを作ったこともあるそうです。

ゲームの企画はテーマ・コンセプト・ピラーの順に決める

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次のコマから、具体的なゲームの企画を立てる講義に入りました。ゲームの企画を考えるとき、「そのコア(核)になるものをまとめることが大切である」と語った貫田氏は、次の制作手順を踏むことが必要と説きます。

<企画のコアの制作手順>

  1. テーマ
  2. コンセプト(ビジョン)
  3. ピラー(作品の柱)

最初に決めるべきは「テーマ」です。そのゲームを通じて描きたいもの、作品やプロジェクトの主題、起こしたいムーブメント、プロジェクトとして成し遂げるべきミッションなどをしっかり決めることで、企画の核が見えてきます。

次の「コンセプト」は、ゲーム内容を端的にまとめたもの。例えば、「このゲームは、○○なアクションゲームです」というようにジャンルを提示したり、プレイヤーに届けたい体験や、遊んだ人が呼び起こされる感情(UX)などを説明したりします。 さらに、ターゲット層を明示したり、場合によっては既存のゲームで似ているものを挙げたりすることもあります。

テーマとコンセプトが固まったら、最後に「ピラー(作品の柱)」が何であるかを考えていきます。ここでいうピラーとは、作品のウリセールスポイントと言い換えても良いでしょう。

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実際に企画のコアを考え、受講者全員が発表

次のコマでは、実際にゲームの企画のコアを考える時間にあてられました。受講者は思い思いにペンを走らせ、A4用紙1枚に企画のテーマ、コンセプト、ピラーをまとめていきます。貫田氏のアドバイスを受けることもできたので、ほぼ時間内に全員が企画のコアを完成させることができました。

約1時間でゲームの企画を一本完成させるのは、実際の業務よりもスピード感が求められる課題とも思われました。しかし、プレゼンを聞いていると「今の潮流」「斬新な目の付け所」「ありそうでなさそう」な企画の連続で、プランナーとして活躍し、さらにステップアップを目指している参加者の意識、レベルの高さを再確認するとともに、貫田氏の講義がしっかり身になっていることがわかります。

なお、研修では時間が限られているため、次のコマでおのおのがプレゼンした後、貫田氏は一言を送るだけとなります。しかし、後日、企画のコアを清書して送付すると、より実務に即した、具体的なアドバイスがもらえるとのこと。
こうしたフォロー体制が整っていることも、今回のゲームプランニング講座の特長といえるでしょう。

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オリジナルタイトルの企画書の書き方

最後のコマでは、貫田氏が数年前に作成したという、オリジナルタイトルの企画書が紹介されます。詳細にはふれられませんが、20~30ページに及ぶもので、コンセプトデザイン、キャラクターデザインが用意されているだけでなく、プログラマーにプロトタイプを制作してもらった壮大なプロジェクト。
発売が未確定の段階で、「ここまで作り込む必要があるのか!?」と驚きを隠せませんでした。
なお、オリジナルタイトルをプレゼンする際は、次のようなポイントに注意するといいそうです。

<オリジナルタイトルをプレゼンする際のポイント>

  • 企画書は読み手を意識して内容やボリュームを策定する
  • コアの部分が伝われば、企画書の構成(順番)は自由

企画書の紹介を終えたところで、受講者がプランナーとして活躍していくためのアドバイスが送られて、この日の講義は終了となりました。

<貫田氏からのアドバイス>

  • ゲームは一人では作れない=チーム戦。その中で、自分のどの能力を発揮して参加するのかを問い続ける。
  • やりたいこと、やれること、やってきたことを明確にして、キャリアと思想に一貫性と説得力を持たせる。
  • 1年、3年、5年、10年、15年先のキャリアパスを見越して仕事を選ぶ。
  • ゲームの企画は、需要と供給を考える。
  • 自分の作品のコアには、自身の哲学や価値観、実体験、思想など、「大事にしているもの」をねじ込む意識を持つ。
  • 自己満足ではなく、第三者の視線を意識し、客観的な評価を行う。
  • プランナーも複数のスキルを持つ。

最後の「複数のスキル」について、具体的に次の3つを身に付けると「食いっぱぐれ」ないそうです。

<プランナーにおすすめのスキルと理由>

  • DCCツール(Mayaなど):3Dデータを使って、自分のビジョンを他者に伝えられる。
  • 英語:自分の考えをワールドワイドに伝えられる。
  • 育成:人を育てた経験があると、組織内でも重宝され、転職時にも有利になる。

今回の研修は「ゲームプランニング講座<入門編>」として、コンシューマーゲームの開発プランナーを目指す方にとって、非常に有意義な内容でした。この研修の続編にあたる「ゲームプランニング講座<応用編>」の開催を今夏に予定していますので、気になる方はぜひお問合せください

講師紹介

貫田将文

約15年にわたり、コンシューマーゲーム開発を中心とした現場にプランナーとして携わる。大手ゲームメーカーの巨大なプロジェクトにも数多く参加。現在も某社にてAAAタイトルを開発中。

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