仕事を進めていてわからないことがあったとき、問題が発生して解決策を探したいとき、あるいは新しい言語やツールに取り組むとき…。エンジニアには日々多くの「壁」が立ちはだかります。そして、その壁を自身のスキルや経験だけでは乗り越えられない場合、同じチームのスタッフに聞いたり、ネットで調べたり(質問をしたり)してクリアしなければなりません。しかし、それらの方法がうまくいかなかったとき、ひとつの解を与えてくれるのが書籍(本)ではないでしょうか。
そこで、エンジニアが読んでおきたい、手元に置いておくべき本を厳選!それぞれの簡単な内容をご紹介します。もちろん、開発環境や使用言語、置かれた立場などによって「役に立つ」本は異なりますから、すべてのエンジニアにおすすめできるものではありません。しかし、今まさに直面している問題にフィットすれば、解決に向けた大きなヒントをもらえるはず。開発に際してバイブルとなりうる本ばかりですので、気になった方はぜひご一読ください。
©2012 O’Reilly Japan, Inc. Authorized Japanese translation of the English edition of “The Art of Readable Code”. ©2012 Dustin Boswell and Trevor Foucher, This translation is published and sold by permission of O’Reilly Media, Inc., the owner of all rights to publish and sell the same.
著者 | Dustin Boswell/Trevor Foucher/角征典 |
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出版社 | オライリー・ジャパン |
定価 | 2,400円+税 |
URL | https://www.oreilly.co.jp/books/9784873115658/ |
オリジナルの発行は2011年、翻訳版の初版は2012年なので、常に刷新されていく技術書の世界では古株ともいえる本書。しかし、2018年1月には21刷目を重ねるロングセラーとなっていることからもわかるように、世代を越えて多くのエンジニアに支持されてきました。
サブタイトルの「より良いコード」とは、誰が見ても「読みやすい=理解しやすい」コードのこと。誰かのコードを引き継いで書くとき、別のハードに移植するとき、急いで完成させなければならないとき、既存のコードが汚かったら(読みにくかったら)、作業は困難なものとなるでしょう。自分の書くコードがそうならないよう、誰が読んでもわかるコードにするためのテクニックが詰まっています。
多くの実践的なサンプルコードが掲載されていることも特長です。実務の中で、キャリアの浅いエンジニアにコードを教える場面も出てきますが、「うまく伝えることができなくて困った」という経験を持つ人も多いのではないでしょうか。そういうシーンでも、わかりやすく技術を伝える教科書として、この本は役に立つはずです。
他者の優れたコードと自分のコードを見比べたとき、そこにある違いに気付いて修正できるようになることは、良いエンジニアになるために必須の能力といえるでしょう。そして、そのためには良いコードを良いと言える素養が必要です。本書の良いコードとそうではないコードの差を見つけ、サンプルコードを試し、実際の業務に採り入れて、技術を自分のものにする。このステップを踏むことで、エンジニアとして一段階上に進めるはず。若手から中堅、そして上に立つ人まで、あらゆるエンジニアが持っておきたい一冊です。
©2010 O’Reilly Japan, Inc. Authorized translation of the English edition ©2010 Kevlin Henney. This translation is published and sold by permission of O’Reilly Media, Inc., the owner of all rights to publish and sell the same.
著者 | Kevlin Henney/和田卓人/夏目大 |
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出版社 | オライリー・ジャパン |
定価 | 1,900円+税 |
URL | https://www.oreilly.co.jp/books/9784873114798/ |
タイトルを見ると技術書、それもエンジニア(プログラマー)を名乗る以上、最低限知らなければいけない基本をまとめたように思える本書ですが、その内容は73人の著名なプログラマーによる「97本のエッセイ」集!日本語版ではそれに、8人の日本人プログラマーが10本のエッセイを寄稿して、107のプログラムにまつわる物語が読めるようになっています。
エッセイの内容は書き手によってさまざま。ある人はプログラムの習得方法について、またある人は実際にコードを書く上での注意点、そして別の人はプログラマーとしての心構え、あるいは顧客との関係…。「いったいどんな発注をしたら、ここまでバラエティに富んだ原稿が集まるの」と、頭に「?」マークが浮かぶことうけあいです。それでも、1本1本を楽しく読めるのは、一流のプログラマーが実体験に基づいて書いているから。もちろん、思わず「なるほど」「そんな方法があったのか!」「あのときこうすれば良かった」とうなずけるエピソードばかり。どのエッセイも見開き単位で完結という読みやすさもあり、最後まで飽きさせない内容となっています。
ちなみに、日本語版のゲストは小飼弾、関将俊、舘野祐一、まつもとゆきひろ、宮川達彦、森田創、吉岡弘隆、和田卓人の各氏。それぞれ「らしい」原稿で、フォロワーにはたまらない内容となっています。
なお、本書はその全内容がウェブで無償公開されていることも特徴です。ウェブ上では、1エピソードずつ開いていく形になりますが、気になる人だけ「つまみ読み」したいなら、以下のリンクからチェックしてください。
Authorized translation from the English language edition, entitled PRAGMATIC PROGRAMMER, THE: FROM JOURNEYMAN TO MASTER, 1st Edition, 9780201616224 by HUNT, ANDREW; THOMAS, DAVID, published by Pearson Education, Inc, publishing as Addison-Wesley Professional, Copyright ©2000 by Addison-Wesley.
©オーム社 2016
著者 | Andrew Hunt/David Thomas/村上雅章 |
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出版社 | オーム社 |
定価 | 3,200円+税 |
URL | http://shop.ohmsha.co.jp/shopdetail/000000004729/ |
タイトルに「新装版」とあるように、本書は2000年に発行されたオリジナル版を全面的に改訂したもの。旧版のサブタイトルは「システム開発の職人から名匠への道」でしたが、新装版では「システム開発の」が外されました。本書は、システム開発にとどまらず、すべてのプログラマーに共通するテーマを書いているので、改題によって内容により符合することになりました。
ちなみに、内容は達人や名匠と呼ばれるためのソースコードの書き方…ではなく、プログラムやプロジェクトに対する姿勢や物事へのアプローチの仕方、ツールの利用術といったもの。これらを8つの章に分けて、短いセンテンスで解説していく内容となっています。それぞれの章は小さいセクションに分かれていて、ポイントとなる事柄はTipsにまとめられ、さらに関連セクション(別の章の場合も多い)に飛ぶことで、深く理解することが可能です。また、チャレンジと題された設問や演習問題が用意されていることもあり、これを解くことで自分が本当にわかっているのかを知ることもできます。
頭から読むのではなく、気になる章やセクションから読み始め、関連セクションを周回しつつ、問題を解いて答え合わせをする(演習問題の解答は巻末にあり)。この反復を行うことで、達人プログラマーへの階段を上るための心構えを身に付けることができるでしょう。
©2018 Toshihiro Ichitani, Takeshi Arai
著者 | 市谷聡啓/新井剛 |
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出版社 | 翔泳社 |
定価 | 2,300円+税 |
URL | http://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798153346 |
短い開発期間の単位を設定し、リスクを軽減して、素早く開発を行う手法を「アジャイル」といいます。日本の開発現場の実態に即して、このアジャイル開発の進め方を紹介しているのが本書です。ストーリー仕立てになっていて、「一人から始める」「チームで強くなる」「みんなを巻き込む」の全3章。Sler企業に勤めるITエンジニアが主人公の山あり谷ありの物語と、各話の解説の組み合わせによる構成は見事で、自然に必要な知識が頭に入ってきます。
タスクボード、スプリントゴール、ファイブフィンガー、スキルボード、モブプログラミング…。耳慣れない用語もたくさん登場しますが、丁寧な解説やわかりやすい図版によって、問題なく知識化できます。日本のSler企業あるあるな事柄、次第にキャラクターが立ってくる登場人物、ストーリーパートと解説パートのバランスも相まって、どんどん読み進めることができる点も魅力です。
初めは味方が一人もいない状況であっても、少しずつ仲間を増やし、チームを作り、時には追い込まれながらも、着実にゴールを目指す。ソフトウェアの開発現場やエンジニアだけでなく、すべての職業、あらゆる立場の人にとって、業務の改善につながるヒントが見つかる一冊といえるでしょう。
©Minatogawa Ai, DQNEO, 2017
著者 | 湊川あい/DQNEO |
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出版社 | C&R研究所 |
定価 | 2,230円+税 |
URL | http://www.c-r.com/book/detail/1108 |
あの「わかばちゃんと学ぶ Webサイト制作の基本」…というより、ウェブサイト「マンガでわかるWebデザイン」の書籍第2弾。バージョン管理システム「Git」の使い方を、マンガでわかりやすく紹介しつつ、合間に手順の説明が行われていく構成で、最後まで飽きることなく読んでいくと「知らぬ間にGitが使えるようになっている!」という内容です。タイトルどおり初心者向けなので、すでにGitを使いこなしている人には物足りないかもしれませんが、新たにGitを導入する際や、新人に教えるときの教科書として使えるでしょう。
マンガにすることで難しい内容を理解しやすくなっている本書ですが、解説ページではスクリーンショットも多用。実際に画面を見ながら、作業を進めることができる点も優秀です。例えば、よく起きるエラーのひとつであるコンフリクトの解説では、わざとコンフリクトを発生させる流れになっていて、実践に即した体験ができるようになっています。ほかにも、コミットの打ち消し(リバート)やHEADに直接コミットしたときの対処法など、Gitの利用時に起きる事態についても、しっかり学ぶことが可能です。
Gitの入門書は数多く出版されていますが、マンガで描かれているものは(おそらく)本書だけ。その読みやすさは類書を凌駕しています。もちろん、基本をみっちり学んで、初心者がつまずきやすいポイントをフォローしつつ、応用編までカバーしている内容は必要十分で、Gitのスタートラインに立ったエンジニアやウェブデザイナーにとって最適の本といえるでしょう。
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