ゲーム開発最前線 ― 【GTMF2019】取材レポート:ミドルウェアやツールの最新情報

【GTMF2019】取材レポート:ミドルウェアやツールの最新情報

2019年7月12日、秋葉原UDXで「Game Tools & Middleware Forum 2019(GTMF 2019)」が開催されました。
GTMFは、毎年この時期に、大阪と東京で行われるゲーム開発者向けのイベントで、東京会場では25のセッションが開かれました。その中から、取材チームが参加できた4つのセッションの内容を紹介します。

GTMF 2019でゲーム開発の最前線を知る

ネットワーク展開するならAmazonのAWSは見逃せない

書籍を皮切りに世界の物流を大きく変え、音楽や映像の配信などの事業をグローバルに展開しているAmazon社は、ゲーム関連企業にとって自社製品の販路だけでなく、サーバーや配信技術などのパートナー的な存在です。
同社のゲーム専門ブランド「Amazon Game Tech」は、AWS(Amazon Web Service)を利用したさまざまなサービスをパブリッシャーやデベロッパーに提供しています。「アマゾンのゲーム関連ソリューションを活用してゲームの開発力・商品力の底上げを!」と題されたセッションでは、同社のサービス内容と今後の展開について知ることができました。

まず、サービスの中核を担うAWSについて、2018年は1,957件ものアップデート(1日あたり5件!)を行い、機能はもちろん、利用者の利便性向上が図られたことが紹介されました。
メモリやストレージの最適化、処理速度を優先したものなど、さまざまなインスタンス(サーバー)タイプを用意し、あらゆる種類のゲームに対応していること。機械学習によって画像や動画はもちろん、ユーザーの動向やドキュメントの分析を行えること。あまり使わないデータを貯めておける堅牢性の高い「Amazon S3 Glacier Deep Archive」など、他の追随を許さないAWSの仕様は、ネットワーク上でゲームを展開するにあたり、利用を検討すべきサービスの代表といえるでしょう。

GTMF 2019でゲーム開発の最前線を知る

動画配信の「Twitch」も含め、ゲームに本腰を入れていることがわかるサービスラインナップ。

また、ゲームの開発工程にAWSを導入することも考えられます。開発環境をすべて(AWS上で)クラウド化することにより、オフィスを増床したり、機材を増やしたりすることなく、開発規模を拡大することが可能です。
これまで、多くの時間を要していたテストも、クラウド化による並列処理で大幅に圧縮できます。こうして捻出した時間をクリエイティブにあてることによって、余裕を持って作業が行えるようになります。多くのクリエイターが望む環境が実現するわけです。

さらに進化していく「Alexa」をゲームに活用

続いて紹介されたのは「Alexa」です。コンピューターに関連するUIが、1970年代のキーボードから1980年代のマウス、1990年代に広まったWeb、2000年代に登場したスマートフォンと、10年ごとに進化していることが示されました。
その上で、2010年代に登場したAlexaをはじめとするVUI(Voice User Interface)には、新たな「創造的破壊」をもたらす可能性があるといいます。

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ただ音楽を流したり、家電のスイッチをON/OFFしたりするだけではない!?

VUIを採用したゲームはまだまだ発展途上ですが、Amazon社では「Alexa上でゲームを遊ぶ」「ゲームのナビゲーションを行う」「Alexaとゲームをする」「操作やアシスタントを担当する」「ゲームのPRやマーケティングを行う」といった利用を想定しています。
また、Alexaがゲーム内課金を行うことも可能です。消費アイテムなどを(ユーザーに代わって)購入する機能は実装しやすいそうで、導入済みのゲームもあるとのこと。

従来のゲームに搭載されていたAIは、仲間を自動で動かすものが大半でした。機械学習と音声による応答を兼ね備えたVUI(Alexa)が本格的にゲームシステムに組み込まれることで、新しいゲーム体験が広がるかもしれません。
クリエイターに、「この大きな変化を、どのようにゲームシステムに組み込むか」「どんな遊びを考えられるか」といったことが問われる未来は、もうそこまで来ているといっても良いでしょう。

3Dエフェクトの作成を楽にする「BISHAMON」

3D空間にポリゴンベースのエフェクトを作成するツール「BISHAMON」を提供するマッチロック株式会社からは、佐野加奈子氏が登壇。同ツールの機能のひとつである「ヌル(Null)エミッター」の使い方を紹介するセッションを開催しました。
実際にパネル上で「打ち上げ花火の作成手順」を示しながら、ヌルエミッターのポイントを解説していきます。

「BISHAMON」ヌルエミッターなしとの比較も行いながら、花火を作る工程を丁寧に解説。 - GTMF 2019でゲーム開発の最前線を知る

ヌルエミッターなしとの比較も行いながら、花火を作る工程を丁寧に解説。

「BISHAMON」のヌルエミッターには、「複雑な動きが可能になる」「同じ動きをするものをたくさん出せる」という演出上のメリットだけでなく、条件次第で「CPU負荷が下がる」「メモリサイズも小さくなる」というメリットもあるそうです。

このヌルエミッターをはじめとする優秀な機能に加え、作業時間を軽減できることもポイントの「BISHAMON」は、すでに多くのタイトルに採用されています。
現在、エフェクト作成に携わっている人はもちろん、より良いエフェクト作成ツールを探しているクリエイターにとっても、発見の多いセッションとなりました。

2019年上半期もアップデートを重ねた「Unreal Engine4」

Epic Games Japanの澤田祐太朗氏は、世界中でゲーム開発の主流となっている「Unreal Engine4」の2019年上半期のアップデート情報を解説するセッションを行いました。
日々の業務で使用している人にとっては既知の情報かもしれませんが、以下にトピックをまとめました。

誰もが気になる「Unreal Engine4」のロードマップも明らかに。 - GTMF 2019でゲーム開発の最前線を知る

誰もが気になる「Unreal Engine4」のロードマップも明らかに。

<2019年上半期に行われたおもなアップデート>

  • Unreal Studioの提供を開始。
  • リアルタイムレイトレーシングを実験的な機能として実装。リフレクション(反射)がきれいになり、デバッグも容易に。
  • レンダリングの最適化により描画効率が向上(ドローコールを行ったとき、Ver.4.21で470だったものが、Ver.4.22では204に)。
  • 「Live++」のライブコーディングが、7.53秒から5.09秒になるイテレーションの高速化。
  • アニメーションの最適化。Skeletal Mesh Reductionは40,000ポリゴンから2,000ポリゴンに。
  • New Audio Engine(オーディオミキサー)の導入で、Audio Systemを改善。
  • Ver.4.23で「Chos」を実験的に公開。

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