特別連載企画! スクウェア・エニックスクリエイターインタビュー
「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」の2大タイトルを抱えるスクウェア・エニックスは、日本を代表するゲームメーカーであり、ことRPGの制作においては第一人者ともいえる地位を築いています。そのスクウェア・エニックスが、今あえて「アクションゲームの開発経験者」を広く募っているのはなぜなのか。その理由とともに、スクウェア・エニックスでの働き方やゲームのつくり方などについて、連載形式で同社のクリエイターインタビューをお届けします!
「スクウェア・エニックスだからこそ作れるアクション」を作りたい。
スクウェア・エニックスがアクション開発経験者を募集!インタビュー(2)
クリエイターインタビュー第2弾は、同社では異色ともいえるアクション開発一筋16年目を迎え、「ディシディア ファイナルファンタジー」でディレクターを務めた鯨岡武生氏に、求める人材像やアクション開発で大切にしていることなどを聞きました。
どんなジャンルのゲームにも求められる「アクション性」
写真:株式会社スクウェア・エニックス 鯨岡武生さん
――鯨岡さんが、スクウェア・エニックスでアクションゲームを開発することになったきっかけを教えてください。
鯨岡
私は入社してから今年で16年目になりますが、ほぼアクションだけを作ってきました。入社後に初めて関わったプロジェクトが、アクション性の高い「キングダム ハーツII」でした。その後、「ファイナルファンタジーXIII」シリーズのバトルを担当したのですが、すべてがリアルタイムで動いており、キャラクターがジャンプする要素もあったので、作り方はアクションゲームに近かったです。「ディシディア ファイナルファンタジー」という「ファイナルファンタジー」シリーズのキャラクターが対戦するゲームは、当然アクションゲームとして作っています。ですから、もう完全にアクション畑。これまでRPG開発が多かったスクウェア・エニックスの中では珍しいかもしれませんね。
――スクウェア・エニックスといえばRPGであり、アクションの印象はあまりないですよね。なぜ、今アクションを作れる人材の採用を強化しているのでしょうか。
鯨岡
ターン制でコマンドを選ぶRPGもジャンルのひとつとして残っていますが、最近は部分的にアクション要素が入るゲームデザインも増えてきました。さらに、これはRPGというジャンルに限った話ではありません。ハードウェアの性能が上がって絵がきれいになり、技術的にもどんどん進化していく中で、「プレイヤーが操作、介入する部分」が多岐にわたるようになりました。ボタンを押せばジャンプするし、ほかのキャラクターにぶつかりそうになったらよける。剣を振ったり、銃で撃ったりもする。それらを実現するためには、リアルタイム性の強いアクションゲームの開発経験がとにかく生きるんです。
この先、スクウェア・エニックスが「アクションゲームばかり作ります」というわけではないですが、もし、「(アクションゲームを)作るすべがわからないから、この手法はとれない」ということになれば、他社さんとの競争力に差ができてしまいますし、「作りたいものをしっかり作れない」ことにつながります。
そういった理由から、社内のさまざまなプロジェクトにおいて、アクションゲームの開発経験者に対する需要は高まっていると感じています。もちろん、弊社内にも開発経験者はいるのですが、今後より多くのチャレンジをしていくためには、アクションゲームを作れる方がまだまだ必要であると考えています。
しっかり管理された中で自分の裁量で自由に働くことができる
――鯨岡さんはスクウェア・エニックスで16年働いていると伺いましたが、続けられたのはスクウェア・エニックスがそれだけ良い環境だったということでしょうか?
鯨岡
そうですね。マスターアップ直前やゲームショウなどへの出展時は、締め切りが迫ることもあってどうしても忙しくなりますが、残業時間などもしっかり管理されていますし、個人的には休暇申請もしやすい会社だと思っています。基本的に裁量労働制になっておりますので、自分で働き方をコントロールしやすいですよ。
もちろん、自由に働くことができるということは、自分で自分をコントロールしなければならないということでもありますが、チーム内で設定されたコアタイムに合わせて出社できていれば、「この1週間はめちゃくちゃがんばるけど、来週は子供との時間を多く取る」といった調整の仕方もできます。
――自分で時間を調整できるのはいいですね。そういう比較的自由な働き方の中で、ご自身が望んだキャリアプランも実現できますか?
鯨岡
大枠でいうと、役職を上げていきたいという方と、ひたすら現場でやり続けたいという方に分かれると思いますが、どちらの道も用意されています。ずっと開発に従事する道を選んだ場合でも、当然部下はつきますし、その部下の勤怠管理や査定といった管理職的な仕事は増えていきます。ただ、「管理の仕事ばかりでゲームが作れない」ということにはなりません。むしろ、私が知る限りでは、40代になっても開発現場の第一線で活躍している人のほうが多いです。職業としてゲーム開発者を選んだのは、「ゲームを作りたいから」ですよね。働いている過程で価値観や環境の変化はあると思いますが、少なくともそういう人たちが、望んでもいないのに開発から遠ざかってしまうような会社ではないと思います。
――「自分のキャリアは自分で決められる」ということでしょうか?
鯨岡
「こういう仕事をやっていきたい」と、声に出しやすい環境ということですね。すべて理想どおりに進むとは限りませんが、意見はちゃんと言えます。また、それを表明したことによって、自分がリスクを負うようなこともありません。例えば、「(自分が担当していない)プロジェクトに興味があるから話を聞いてみたい」「自分の幅を広げるために今まで作ったことのないジャンルのプロジェクトに移りたい」といった希望を、上司に伝えることができます。もちろん、そのとき所属しているチームの状況にもよりますが、要望が通ることもあります。社内で興味のあることに対し、どんどん手を挙げられる環境です。
――そうやって、鯨岡さんも手を挙げてきたわけですね。
鯨岡
手を挙げていました。やっとひとつのプロジェクトが終わったくらいの新人時代に、「あのプロジェクトに行きたいです」と上司に伝えたこともあります(笑)。そのときは「今の仕事もやりきってね」と言われたので、しっかり終わらせてから行きました。ただ、今抜けられたら困るというタイミングもありますので、その時々の状況にもよるとは思います。それでも、社内で「このプロジェクトで、このポジションを求めています」といった情報が共有されているので、チャレンジはしやすい環境ですね。
もっと大きな話をすると、「自分でプロジェクトを立ち上げたい」という相談もできます。もちろん、当人の能力などで判断されるのですが、「こういうことをやりたい」という話は、確実に聞いてくれます。私の場合も、本当にありがたいタイミングで「じゃあお前も1本やってみなよ」と言ってくれた人がいたので、プロジェクトを立ち上げられたという経緯もあります。チャンスは探しにいけば、いくらでもつかめる会社です。
IPの世界観に合わせて「手触りのいいアクション」を作る
――ずばり鯨岡さんにとっての「アクションにおける“肝”」は何ですか?
鯨岡
アクションを作るのであれば、「手触りの良さ」が何より大事だと考えています。その上で、タイトルやIP(知的財産)に合わせることも絶対に必要です。例えば、「キングダム ハーツ」の世界観の中に、どんなに爽快だとしても、殺伐とした表現は合わないし求められないですよね。そのタイトルにおける表現やキャラクターの方向性、アクションの手触りなどは、アジャストしなければいけません。
操作性ひとつをとっても、スピーディーでアクロバティックなゲームもあれば、どっしり腰を落として一発ずつ当てていくゲームもあります。世界観の重みを出すために血の表現を用いることもあれば、全年齢向けにポップな表現でまとめることもあります。これらをタイトルやIPごとに正しく選択し、その中で自分の作りたいものを実現していくのがとても大事です。
「ファイナルファンタジー」らしさ、「ドラゴンクエスト」らしさとは何か。プレイヤーの人たちは何を期待しているのか。それに対して、自分は何を作るべきなのか。こういったことを常に考えながら作っていますね。
――――「スクウェア・エニックスらしいアクションを作る」ことが大事というわけですね。
鯨岡
「スクウェア・エニックスのIPを活かしたアクションを作る」と考えてもらってもいいと思います。「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」と、ディズニーさんといっしょに作っている「キングダム ハーツ」の世界観。それぞれ特徴は違いますが、スクウェア・エニックスらしさが詰まっているのは間違いありません。これらのIPに魅力を感じてくださるアクション開発経験者の方には、ぜひ参加してほしいですね。
――具体的には、どういった開発経験のある人を求めているのでしょうか。
鯨岡
一口に「アクションゲームを作っていました」といっても、内容は多岐にわたります。例えば、アクションゲームのメニュー画面を作っていた方や、スマートフォンでアクション要素の強いゲームを作っていた方も「アクションゲームの開発経験者」といえるでしょう。
そういった方たちの経験も必要ではあるのですが、今回の募集では、HDゲーム機のアクションゲームで「プレイヤー(キャラクター)を作ったことがある」「エネミーや、それらを用いて遊ぶコンテンツを作ったことがある」という経験はもちろん、「企画から調整までを担当した」という方を特に求めています。アクションを作る上で、何を気にする必要があって、どうすれば手触りの良さやおもしろさにつながるのか、といったことが考えられる方であれば即戦力です。
――制作に際して、他社のアクションゲームやアクションパートも参考にしていますか?
鯨岡
「世間で何がウケているのか」「どういったものが話題になっているのか」というアンテナは、当然張っています。自分でプレイもします。その中で、「どのような理由があって、そう作られているのか」を読み解いていくので、延々とジャンプだけを繰り返して観察するようなこともあります(笑)。
プレイヤーとしてのゲーム体験や自身の開発経験、それぞれをパーツごとに分解して、頭の中の引き出しに日々しまっていっているような感じです。 その後の開発では、例えば「一撃の重い手応えを出す」というお題があったときに、どのような「動作」「演出」「操作」で作ればいいのかを、引き出しをあさりながら、論理的に組み合わせていくことが多いですね。
――アクションパートを制作するとき、タイトルを統括する方からはどんな要望が来ますか?
鯨岡
始めに、「こういうジャンルのゲーム」「こんな人に遊んでほしい」「目指す雰囲気はこんな感じ」という指針が定められます。ディレクターの場合は自分で決めます。あとは、これらにマッチするアクションパートにするべく内容を固め、肉づけしていきます。
会社やプロジェクトによっても違うのでしょうが、私はあまり細かいことまで「こうしてくれ」という指示や要望を受けたことはないです。気づいていないだけかもしれませんが……(笑)。
「こんな要素を追加してみました」「ここではこんな風に遊んでもらおうと思います」「これで驚かせます」というクリエイティブな部分は、「指針とはずれていないし、おもしろいからOK!」となることがほとんどですね。なので、責任は伴いますが、やりがいも大きいです。
ゲームづくりに必要なことは会社の枠を超えて共通
――別の会社のゲームづくりの文化とスクウェア・エニックスの文化は別物であると思いますが、前の会社の経験は活かせるのでしょうか。
鯨岡
実は6年ほど、ある会社さんに常駐して開発していた経験があります。私はずっとスクウェア・エニックス内で働いてきたので、初めはとても心配でした。同じアクションゲームを作るにしても、「何を言っているのかわからない」「その作り方はおかしい」と言われてしまうんじゃないかと。ところが、いざ蓋を開けてみたら、そんな心配は無用だとわかりました。いっしょに作っていく中で、「ここにはこの機能が必要ですよね」という話をしたら、「そうですね」と返ってくる。ゲームづくりのロジカルな部分は、どの会社でも変わらないと安心できましたし、自分の作り方が間違ってはいないのだと腑に落ちたことも大きな収穫でした。
もちろん、組織編成や開発手法など、細かな違いはあります。ですが、ゲームを作るために培ったものは、他社さんにおいてもしっかりと活かすことができました。これは、今後スクウェア・エニックスへ入社される方にとっても同じだと思いますので、これまでの経験を活かして、思う存分活躍していただきたいです。
――最後に、これから応募しようと考えている方に一言お願いします。
鯨岡
転職を考える方たちにとってのスクウェア・エニックスは、「RPGしか作らない」「ハードルが高そう」といったイメージが強いのかもしれません。ですが、これまで申し上げたように、アクションゲームの開発経験者の需要は高まっていますし、ジャンルを問わず、本当におもしろいものを作ろうとして、さまざまなプロジェクトが開発や研究を日々行っています。また、自分がやりたいことを実現できる、働きやすい環境であるとも思っています。
これまでのアクション開発経験を活かしたいとお考えの際は、ぜひスクウェア・エニックスも候補に加えてみてください。いっしょにおもしろいゲーム、未来のゲームを作りましょう。
- 株式会社スクウェア・エニックス 鯨岡武生
- 約半年のゲーム制作会社勤務を経てスクウェア・エニックスへ転職。その後、ひたすらアクションゲームだけを作り続けてきた。アーケード版とPlayStation®4版「ディシディア ファイナルファンタジー」のディレクターを務めた後、新規AAAタイトルのバトルコンテンツリーダーに就任。
Back number インタビュー企画 第1弾 - バトルディレクター 鈴木良太さん
クリエイターインタビュー第1弾として、株式会社カプコンで長らくアクションゲームに携わった後、2019年にスクウェア・エニックスに転職、現在は新規AAAタイトルでバトルディレクターを務める鈴木良太さんに取材しました。
RPGでもアクションでもトップを目指す
写真:株式会社スクウェア・エニックス 鈴木良太さん
――始めに、鈴木さんの現在の仕事内容と仕事環境を教えてください。
鈴木
現在は、新規AAAタイトルのバトルディレクターを担当しており、バトルパートの企画立案から、クオリティー監修までを行っています。AAAタイトルということもあり、求められるクオリティー水準が高くありますが、ハイクオリティーのものを作ることに対するモチベーションが高いゲームデザイナーさんが非常に多く、また皆さんとても協力的なので、私が実現したいと思ったことをあきらめることは、ほとんどありません。転職して感じたのは、ゲームシステムエンジニア、テクニカルアーティスト、VFXアーティストの技術力が非常に高いことです。
――スクウェア・エニックス=RPGであり、アクションというイメージはないというのが一般的な認識だと思います。なぜ、このタイミングでアクションゲームの開発経験者が必要なのでしょうか。
鈴木
確かに「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といったRPGゲームの印象は強いと思います。昔は少ない容量の中でたくさんのことを実現し、物語を作るために「戦う」「逃げる」というコマンドバトルが多かったのですが、現在はハードスペックが上がり、RPGでも「アクション要素を取り込んだものが主流」になりつつあります。そこで、弊社でも「社内でアクション要素のあるRPGを作る体制」を整える必要が出てきました。そのため、アクションゲームの開発経験者を高い温度感で求めています。
――高いアクション性を持つRPGの潮流は、これからも世界的に続きそうですか?
鈴木
極端な話ですが、最近は「コマンドバトルというゲームデザイン自体がオールドスタイル」といわれてしまう風潮があります。海外では「JRPG」といわれて、比較的年齢層の高いユーザーさんには抵抗なく遊んでいただけますが、それこそ「GTA(グランド・セフト・オート)」であるとか「FPS(ファーストパーソン・シューター)」を遊んで育ってきた若い世代のユーザーさんは、コマンドバトルへの抵抗が結構高いです。例えばバトルシーンで、目の前の敵がプレイヤーのコマンド選択を「ただ立ってずっと待っている」ということに対し違和感を覚えるわけです。
――国内のユーザーも、アクションやリアルタイムであることを重視する傾向がありますね。
鈴木
もちろん、スクウェア・エニックスならではのRPGづくりも大事にしていきます。これまでスクウェア・エニックスのゲームをプレイしてきた方にも楽しんでいただけることを踏まえた上で、アクション要素の高いゲームを遊んで育ってきた若いユーザーにも、しっかり受け入れてもらえるゲームを目指す。どちらかを取るのではなく、両方を取りにいく。そこが大事なところです。
――そのためにはアクションゲームの開発経験者が必要ということですね。
鈴木
はい。スクウェア・エニックスは、RPGの制作に長い歴史を持ち、さまざまな手法でRPGというジャンルの開発に取り組んできました。特に、パラメーターを主軸に置いたゲームデザインのノウハウはたくさん持っていますし、多くの実績を積んできています。また、アクション要素を取り入れたRPGも制作してきました。しかし、リアルタイム性の高いアクションゲームづくりに関しては経験が少ないのが現状ですので、社内に「クオリティーの高い、世界に通用するアクション要素を持つRPGを作れる」体制をしっかり整えたいと考えています。
ゲームクリエイターの働きやすさを重視した「労働環境」と「キャリアプラン」
――世界に通じるアクション要素を持つRPG制作。それを実現するには労働環境も大切ですよね。
鈴木
この言い方が正しいかはわかりませんが、単刀直入に「ホワイトな会社」です。ゲーム制作は非常に忙しい仕事で、夜もなかなか帰れないというのはよくある話ですが、スクウェア・エニックスでは日々の業務や月の労働時間を常にチェックしています。
働きすぎている場合は休暇の取得を強くすすめられ、どうしても休めない場合は精神的な負担を面談で確認するなど、ゲームデザイナーに対するサポートはとてもしっかりしています。ほかにも、社内の休憩スペースや食事をするラウンジなども充実しており、職場にいながらリフレッシュできる環境が用意されているので、非常に働きやすい環境であると思っています。
――クリエイターは、自分の納得するものを作るために、時を忘れて作業をしている印象があります。
鈴木
これはゲーム制作に限らないと思いますが、仕事にのっているときは「もう行くところまで行っちゃおう」と、ついつい働きすぎてしまうこともあるでしょう。ゲームは時間をかけた分だけクオリティーも上がりますから、いいものを作るために残業し、休日出勤してでも「やるぞ!」というスタンスで業務に取り組んでいるスタッフもいます。そういう働き方を(会社が)強制的に止めることは基本的にありません。ただ、体調やメンタルに対するサポートは手厚いです。
――長く働いた先には、望んだキャリアプランも描けますか?
鈴木
ゲームデザイナーからプロジェクトを統括するプロデューサーへ転身、またプロジェクトの進行を管理するプロジェクトマネージャー、ゲームのトータルクオリティーを監修するディレクターなど、前例がたくさんあります。つまり、本人の能力次第で望むキャリアプランを実現できる体制が整っているといえるでしょう。
私の場合は「ゲームが好きで、ゲームを作りたくてゲームクリエイターになっている」ので、今後も現場で挑戦し続けていきたいと思っています。しかし、結果を出して昇進すると、現場から距離を置いて管理業務を行う必要が出てくる。この分岐点が多くの企業には存在します。
一方、スクウェア・エニックスでは現場から距離を置き、プロジェクトのマネジメントや管理、いわゆる組織業務をメインにして昇進していくこともできますが、ゲームクリエイターとして現場で挑戦し続ける道筋も、ちゃんと用意されています。そして、現場で挑戦し続けながら昇進していく道を選んだ際の給料の天井値が、比較的高いところまで設けられているので、そういう意味でのやりがいもあると思います。この点は、私自身も転職に際してかなり大きいポイントになりました。
――現場での働き方は、前職と比べてどのように変わりましたか?
鈴木
基本的にそこまでは大きな違いはないですね。ただ、スケジューリングや進行管理を現場のリーダーが兼任で行う会社がほとんどの中、スクウェア・エニックスではプロジェクト単位やパート単位でプロジェクトマネージャーがついて、スケジュール管理や会議設定などを行ってくれます。サポートがかなり手厚く、開発に集中できる点は前職とは大きく違います。
もちろん、現場での進捗管理も必要ですが、物量の多い大きなプロジェクトになると、作らなければいけないものが非常に多くなるので、管理業務を専門にサポートしてくれる人がいることは大きいです。クリエイターにとっては、「目の前の制作物に集中できる環境」といえるでしょう。
やりたいことに対し協力的なメンバーがそろっている制作チーム
――ほかにも、スクウェア・エニックスならではの環境の違いはありましたか?
鈴木
良い意味で特殊であると感じたのは、「行動を起こした人が跳ね上がるチャンスをつかみやすい」会社であるということです。若いから提案が認められない、社歴が浅いから主張が受け入れられないという制約がないので、本人の熱意と相応の説得力があれば、周囲の人を巻き込みつつ、チャンスをつかめます。向上心の高いゲームデザイナーにとっては、すばらしい環境といえますね。
そして、コミュニケーションがとりやすく物腰が柔らかい人が多いので、相談もしやすいです。自分がやりたいことに対してプログラマーさんが協力的で、「検証程度で一回やってみたい」という相談レベルでも、前向きに協力してくれる人が多く、非常にやりやすい環境であると思います。
――トライしやすい環境はいいですね。ほかの会社で培ってきたノウハウも活かせますか?
鈴木
アクションゲームづくりのノウハウは間違いなく活かせます。会社ごとにゲームの作り方や文化の違いはあると思います。私自身も違いを感じた部分も当然あります。でも、「文化の違いがあるからこそ、新たに学べること」もあります。私自身、20年間、アクションゲーム専門に開発に携わってきましたが、前職では当たり前と思っていたことがスクウェア・エニックスでは常識ではなく、前の会社では難しいとされていたことがここでは簡単にできる場合もあります。培ってきたノウハウを最大限活かしつつ、新しいものを吸収できているので、やりがいも学びがいもある。クリエイターとして非常に良い環境といえますね。
求めるのは「おもしろさをロジカルに考えられる」クリエイター
――アクションゲームが作れることは当然として、それ以外に応募者に何を求めますか?
鈴木
アクションゲームというジャンルに限ったことではありませんが「おもしろさということに対して、ロジカルに考えられる」ことでしょうか。実務に関していうと、「アクションゲームのプレイヤーキャラクターやエネミーキャラクターを作った」「企画・アイディアを出した」という経験だけでなく、それらの「実装」、そして製品版に向けての「ブラッシュアップ(磨き上げ)」がしっかりできる方ですね。
「企画やアイディアを考えること」と「どのように実装すべきか考え、仕組みを実現するための検証を行い、現場の旗振りをしながらブラッシュアップをして製品クオリティーに高めること」。前者と後者では、求められる能力が当然違います。企画段階だけを担当する方の場合、「おもしろい、これが新しい、魅力的である」と頭の中でシミュレーションはできても、それを実現するための手法まで考慮していないパターンもあります。今、私たちが求めているのは、アクションの一部分ではなく、最初から最後までできる方です。
――最後に、これから応募しようと考えている方に一言お願いします。
鈴木
スクウェア・エニックスと聞くとアクションゲーム開発のノウハウの需要はないという印象を持たれている方も多いと思います。私自身も転職する前はそう思っていました。先述のとおり、実際はそんなことはまったくなく、高い温度感でアクションゲーム開発経験を持つゲームデザイナーを求めております。私のようにアクションゲーム開発に特化したゲームデザイナーでも、これまで培ってきたノウハウを最大限活かして業務に取り組めております。そして、それに対する評価もしてもらえる「やりがいのある環境」であると感じております。これまでアクションゲームを作ってきて、転職を考えているのであれば、ぜひエントリーしていただけたらと思います。
――RPGだけでなく、「アクションゲームもスクウェア・エニックス」という将来もありそうですね。
鈴木
これは、完全に私個人の考えですが、「RPGで日本を代表するゲームメーカーでありながら、アクションゲームにおいても日本を代表するゲームメーカーの1社にする」という目標を持って、業務に取り組んでいます。これを達成することは決して簡単なことではありませんが、1日でも早く達成するために、「アクションゲーム開発のノウハウを持つゲームデザイナーを増やすこと」が必要不可欠であると強く思っています。「RPGでもアクションでもトップを目指す」。この目標に向けて、私たちといっしょに取り組んでいただけるゲームクリエイターの皆さんのご応募をお待ちしています。
- 株式会社スクウェア・エニックス 鈴木良太
-
第三開発事業本部に所属するゲームデザイナー。1999年に株式会社カプコンに入社。20年にわたって3Dアクションゲーム、2D対戦格闘ゲームを専門に開発に携わる。2019年にスクウェア・エニックスに転職。現在は新規AAAタイトルでバトルディレクターを務める。
代表作:デビル メイ クライ5、Dragon's Dogma(ドラゴンズドグマ)