名越スタジオ スペシャルインタビュー
「龍が如く」シリーズをはじめ、世界的なヒットを多数飛ばしてきたゲームクリエイターの名越稔洋氏。
彼が2021年11月に立ち上げた株式会社名越スタジオは、現在、世界のゲームファンに向けた新規タイトルの立ち上げメンバーを募集しています。
今回は、社長である名越稔洋氏と4名の中途採用メンバーに、名越スタジオの魅力をたっぷりと語っていただきました。
名越スタジオが目指すもの、これから創り出すコンテンツとは?ここでしか聞けないクリエイター必見のスペシャルインタビューです!
名越スタジオ 代表名越稔洋氏インタビュー
名越稔洋がいっしょに作品を作りたいクリエイターとは?
セガの取締役であり、龍が如くスタジオの総合監督でもあった名越稔洋氏は、2021年11月に独立。みずからの名を冠した名越スタジオを立ち上げました。中国発のグローバル企業であるNetEase Gamesの100%出資を受け、同じ志を抱くメンバーを核に世界に向けたハイエンドゲームの制作をスタート。その後も積極的な採用を続け、国内外の名の知れた会社から精鋭がそろいつつあります。
「ドラマ性の高いゲームになる」という最新作を共に作るメンバーをまだまだ募集しているという名越氏に、スタジオの今の様子やゲーム作りのこと、求める人物像などを伺いました。
作っているのは風通しの良い制作環境
写真:株式会社名越スタジオ 名越稔洋さん
――公式サイトでは「風通しの良い場所にする」という目標を掲げていますが、どんな仕組みを考えているのでしょうか。
名越
9人でスタジオを立ち上げましたが、今後もっと大きなスタジオになった時にも「必要な情報がスムーズに行き届く」「言いたいことが言える」という部分はしっかり実現したいと考えています。今はまだ人数が少ないこともあって、そこは上手くやれていると思っています。
ただ将来、目標とする人数がそろった場合に、どのように理想的なコミュニケーションを成立させるのかは、やり方、考え方も多少、変わるはずなんです。後ほどお話ししますが、私はその重要なポイントとして、「風通しの良いことの重要性の理解」が大切であり、それを軸にチームの状態を良い方向へ導きたいと考えています。
――当然の話でありますが、チームの状態は重要ですよね。
名越
もちろんです。結局のところ、チームの状態がゲームのクオリティを決めると言ってもよいでしょう。私たちは世界に通じるゲームを目指しています。それにはチームが健全な状態で開発に臨む必要がありますし、そうでなければ広く認められるクオリティにはなり得ない。ですからチームの状態には大いにこだわりたい。公式サイトで最初に「風通しの良い場所」というメッセージを打ち出した理由には、そういう意味も含まれています。
問題は、それをどう実現するのかという話ですが、弊社スタジオにはキャリアが長く経験値の高いメンバーがそろっています。そのメンバーはゲーム制作に長けているだけでなく人生の先輩としても経験値が高い。例えば現場がエキサイトしたときにも、そこからどう判断し、どう進めればいいのか?というノウハウをよく知っています。端的に言えば、仕事に対しては誰しも言いたいことがあるし、自分なりの答えを持っているわけですから、まずそれを全員に吐き出させて、その上で最終的にクオリティの向上につなげるノウハウです。そういうことを大切なポリシーとして考えるメンバーがいることが、まず重要なのだと思います。
――スタートアップであっても、経験豊富なスタッフが最初から組織の要所にいる、というのは強みですね。
名越
はい。作品というものは正直で、制作中にスタッフ同士が前向きに練り込んで作ったものと、見かけはよくできているけど中身がうまくできていない、機能していないものとの違いは触ってみるとすぐにわかります。 長くこの仕事をしていると極端な話ではなく、ゲームをプレイすれば「このチームはプログラマーとプランナーの仲が悪かったのかもな…」ということさえ読み取れるものです。何が足りないのか?どういうフローで作られたのか?出来上がったゲームをプレイすれば、わかってしまうものです。その点において、うちのモノ作りには自信があります。
日頃からのコミュニケーションが大切
――とはいえ、新たにジョインした方が組織になじむまでには苦労がありそうです。
名越
ある程度のキャリアがある方であれば、当然ながら色々な経験をしてきています。
うまくいったことだけでなく、納得できない思いを抱えたままの人、仕事に関して良い思い出がない人だっているでしょう。でも、そんな苦い思いをした人であっても、モノ作りに懸ける強い想いはしっかり持っています。新たに仕事をする上でも、あるいは面接の場面でも同じだと思いますが、その人が大切にしていること、後悔していることなど、さまざまな想いをまずしっかり聞くことが大事なんじゃないでしょうか。それをふまえてその人の良さをリスペクトしてあげることが大切だと考えます。
――ちなみに名越スタジオでは、休憩スペースなどで普段から名越さんともお話ししやすいそうですね。
名越
求められれば、いつでも誰とでも話します。でも社内をフラフラして、スタッフと話をするスタイルは今のスタジオになる前から同じです(笑)。そうやって、みんなの様子を見ていないとわからないことって、やはり多いと思います。「最近、元気がないなぁ」という人を放っておくと、そのうち辞表が出たりする。仕事を辞める事情は人それぞれなので一概には言えないですが、ちょっとした仕事の悩みの積み重ねだとか、もっと早めにケアできたら職場を離れずにすんだのでは…?というケースは少なくないと思います。
大きな組織では特にそうですが、会社という場では「この人とは1年ぶりに話をした」というケースがあったりします。でも小さな組織でも見て見ぬふりをすれば同じことが起きてしまうものです。そうならないためには、お互いに努力する必要がありますが、やはり上司や先輩が率先して汗をかくべきだと思います。
トレンドには流されずドラマ性の高いゲームを作る
――多くの方が気になっていると思うのですが、今作っているゲームについて教えてください。
名越
現段階で詳細をお話することはできないのですが、私はやっぱり一貫して人間ドラマを作りたいんです。それをゲームという形で伝えたい。少なくとも私が直接関わるゲームにおいては、この方向性はこれからも変えるつもりはありません。またその中身にしてもトレンドに乗ったほうがビジネスとしては良い場合もあるかもしれませんが、作り手自身がそのトレンドに興味がなかったら、良い結果にはつながらないと思います。
その意味で私は、自分が素直におもしろいと思えるものを選択し、それを高いレベルで楽しめる作品に仕上げていく。それだけです。今の段階で名越スタジオが生み出すゲームに注目してくださっている方の期待も、そこにあると思うんです。その期待をあえて外すようなことはしない。ただ、期待を越えたものを提示することも大事だと考えています。
――期待に添いつつも、それを超えていくと。
名越
優良なゲーム作品が乱立する時代において、期待を超えた驚きを提供できなければ「普通のゲームだったね」で終わってしまいます。それはあまりにも悲し過ぎます。そうならないためにはゲーム開発を進める上で、良い選択を積み重ねつつも、そこに留まらず、さらに良い選択は本当にないのか?を、常に繰り返しながら高いクオリティのモノ作りをやり遂げなくてはなりません。もちろんプレッシャーにはなりますが、エンターテインメントの仕事をする上で最も有り難いことは期待されることですから、やるしかない。
また私としてはひとつのゲームを長々と作るつもりはありません。適切なタイミングで情報を出し、タイムリーなタイミングで作品を届けたいと考えています。それがファンの皆さんの期待に応えることになると思いますし、スタッフに色々な経験をしてもらうチャンスを増やす意味でも良いことだと考えています。
NetEase GamesとはWin-Winの関係に
――名越スタジオに出資しているNetEase Gamesとの関係性はどのようなものなのでしょうか。
名越
NetEase Gamesは、弊社を含む多くのスタジオに出資しています。彼らには潤沢な資金があり、それを活かす体制やノウハウも備えています。すでに世界的なゲームコンテンツをいくつも展開していますが、今後、さらに高い認知を得るIPを増やしたいでしょうし、コンソールゲームのビジネスをもっと拡大したいという想いもあるでしょう。そのこともあって、私に声をかけてくれた。
つまり、私のコンソールにおける実績を買ってくれたわけで、お互いにWin-Winな結果を目指して努力している最中です。私は会社の資金繰りに四苦八苦する暇があるなら企画書やシナリオを書いていたい人間なので、そこを補ってくれることに対してゲームをヒットさせることで恩返しをしたいなと思っています。
――NetEase Gamesから、作るゲームに関しての要望はあるのでしょうか。
名越
もちろん各種の予算に関して話をすることはあります。とはいえNetEase Games側から作るゲーム内容に対して「こうしてくれ」という要望はまったくありません。独立したスタジオとして私たちのビジョンや作り方を信頼してくれています。
――予算が担保されつつも、スタジオ側で自由にゲーム作りができるのは大きいですね。
名越
とてもやりやすい環境です。ある意味で、言い訳ができない状況でもあるわけで(笑)、そこはもう、全力で面白いゲームを作ることに集中したいと思います。
時代に合ったゲームの作り方を追求
――少し話が変わりますが、最近のゲーム作りの流れをどうお考えでしょうか?
名越
文字で構成された小説、文字と絵で表現する漫画、映像と音を用いた映画。ここにインタラクティブな要素が加わったのがゲームですが、まだまだ歴史が浅い業界です。でも、短い期間でエンターテインメントの主役のひとつに成長しました。昨今では、Unreal Engine 5といった優れたゲームエンジンや各種開発ツールが生まれ、そのクオリティの向上には目を見張るものがあります。今までとはゲームの作り方も、また大きく変わりつつあります。しかし、そのおかげで他メディアへの展開の可能性やビジネスチャンスも広がっています。結果的に作り手もモチベーションを高く持てる時代になったのではないでしょうか。
――地域やプラットフォームを超えてヒットするゲームもたくさん出てきました。
名越
かつては、ある地域ではヒットした作品が、他の地域ではまったく歯が立たないという話をよく聞きました。でもSNSの時代に入ったこともあり、「おもしろさの本質が共有・共感される」ことで、ゲームによっては地域の枠を越えて当たる作品が数多く出てきました。
「龍が如く」も第1作は日本ではヒットしたけど、欧米でセールスを伸ばすのは当時、非常に難しかった。ところが今は、(同シリーズが)欧米でも大きなセールスを記録するようになりました。それはつまり普遍的なおもしろさが備わっていれば、国境がなくなっている証拠だと思います。
――コンテンツがヒットする流れは時代と共に変わってきましたね。
名越
確かにワールドワイドで大きなビジネスになるゲームはさらに増えました。クラウドの存在やサブスクリプション等の戦略も大きく起因していると思います。もちろん我々もヒットを目指す上で、それらを強く意識はしています。しかしセールスにつながりやすいトレンドにばかり目を奪われてはマズいという思いもあります。私の大好きなアーティストが「ビジネス的な勝利とクリエイティブの勝利は分けて考えるべき」という趣旨の発言をしています。これは私にとって非常に共感できる言葉です。音楽であれば、今は伝達スピードの観点からイントロの長い曲はダメとされていて、クライマックスから入るのが良しとされています。なんならイントロなんて無い方が良いという人さえいる。でもイントロが長くても素晴らしい曲はあるし、イントロが長いからこそ伝えられる感動もあります。私としてはトレンドを意識しつつも、自分たちの信念に基づいたモノ作りは忘れてはならないということも改めて感じています。ひょっとしたらイントロが長い曲であっても時代の中で必要としている人もたくさんいるはずですから。
名越スタジオはパンクバンドのような制作集団
――目指すのは、マーケットありきのモノ作りではないと。
名越
勘違いを避けてもらうために申し上げたいのは、プロである以上、マーケットへの意識は大切にしています。ですから作ろうとしている作品と、市場との答え合わせは必ずします。作品をヒットさせたいという想いに変わりはないので。でも私たちはミュージシャンに例えるなら、ある種のパンクバンドのようなスタジオでありたい。常識にとらわれず、個々の思想から生まれたアイデアを尊重しつつ、常に攻めの姿勢で作品を作り、市場にぶつけていく。そのスタンスがたぶん合っているし、そういう人(ゲーム制作者/制作会社)がいてもいいと思うんです。会社として巨大になるのが目標でなく、みんなで真剣におもしろいと信じれるゲームを作る集団を目指しています。そういう立ち位置のスタジオやモノ作りの姿勢が「いいね」と、言ってくれる人が参加してくれるとうれしいです。
――名越スタジオのゲームづくりに共感してくれるクリエイターということですね。
名越
共に制作をしてくれる人には、私が物事を決めるプロセスを見て学んでほしいし、同時に新しいIPを作る喜びを知ってほしい。そして、このスタジオから新しいリーダーがたくさん生まれてほしい。そういう志のある人にどんどん参加してもらって、いずれ自分で立ち上がる時が来たら、私は全力で応援します。それが私がクリエイターとして最後にやらなければならない目標のひとつですから。
――これから名越スタジオで働こうという方に、望むことはなんでしょうか。
名越
とにかくどんどん発言をしてほしいです。僕が言ったことに反対であれば、それをストレートに言ってもらうのは当たり前。事実、スタッフは思ったことは忖度なくバンバンぶつけてきます。そして思いつくなら対案も出してほしい。そうしたら作品にとってどちらがベストなのかの議論を尽くします。もちろん反対意見の方が正しい場合も大いにあります。若いスタッフの意見が時代としての正しい選択だと感じる時には、私も勉強させられることも多いんです。そういうプロセスを経て、仮に部分的であっても「ここは自分が決めた」というアイデアをみんなが積み重ねていってほしいです。そのほうが、うまくいった時のうれしさも大きいですし、失敗だったとしても学びが必ずありますから。
――とはいえ、全部の意見を拾うわけにはいかないですよね。
名越
もちろん最終的にはまとめる作業が必要ですから、全部採用するわけにもいかないです。ゴールを作って「この中にシュートしてくれ」と決めるのは私の仕事です。ただ、そう言っているのに、ゴール自体が右に左に動いていたらスタッフが困りますよね。また極端に小さいゴールを作ってもボールが入らなくて進まないし、ガバガバすぎても作品がつまらなくなる。そのあたりはしっかりと定める自信はあるので、不安なく力を発揮してもらえればと思います。
――最後に、これから名越スタジオに応募するクリエイターにメッセージをお願いします。
名越
私は、人が好きだからこそエンターテインメントの仕事が好きです。仕事で悩むこともたくさんありますが、新たなゲームを作り、その魅力がユーザーに伝わった時の喜びを知っているから今でも作り続けています。そんな価値観にふれたい人がいるなら、迷うことなくうちに来てほしい。もし私に聞きたいことがあるなら、私なりの言葉で100%答えます。会社としては誠意を持って新たな人材を迎え入れる準備はできています。ぜひ応募してください。
- 株式会社名越スタジオ 名越稔洋
- デザイナーとしてセガに入社。「デイトナUSA」でディレクションを担当し、「スーパーモンキーボール」「スパイクアウト」などを手掛ける。セガの分社化では子会社のひとつである株式会社アミューズメントヴィジョンの社長に就任。歓楽街に生きる熱い男たちのドラマを描いた「龍が如く」は、日本的な要素が散りばめられた作品にも関わらず、世界的ヒットシリーズとなった。2021年に株式会社セガを退社、同年11月に株式会社名越スタジオを設立した。
名越スタジオで現在活躍中の社員が語る
名越稔洋と世界を熱狂させるタイトルを作るクリエイターになる
「龍が如く」シリーズをはじめ、世界的なヒットを多数飛ばしてきたゲームクリエイターの名越稔洋氏。彼が2021年11月に立ち上げた株式会社名越スタジオは、現在、世界のゲームファンに向けた新規タイトルの立ち上げメンバーを募集しています。
そこで、やはり大手ゲーム会社で有名タイトルを手掛け、この春、名越スタジオに転職してきたクリエイターに、会社の雰囲気や開発環境、欲しい人物像について語ってもらいました。
大手ゲームメーカーからスタートアップ企業への転職
写真:(左から)株式会社名越スタジオ 大井圭介さん、小坂井優一さん、ジョナサン・リーさん、池田信一さん
――まず、皆様のご経歴と仕事の内容をお教えください。
大井
大井圭介と申します。初めはフロム・ソフトウェアに入社して、「アーマードコア」や「ブラッドボーン」などの開発に携わり、「SEKIRO」の開発に途中まで関わった後、ゲーム以外のキャリアにも興味がありましたので、IoT関連のベンチャー企業に4年程行きました。そこでは、超音波スピーカーのソフトウェアを作りました。
――そこから名越スタジオへということは、ゲームを作りたいという気持ちがまた盛り上がったということでしょうか?
大井
はい。ゲーム制作会社の立ち上げ期に参加できる機会は少ないので、単純に「おもしろそう」という部分もありました。
小坂井
小坂井優一と申します。前職はレベルファイブで「妖怪ウォッチ」や「二ノ国」などのゲーム開発に携わっていました。新卒からプランナーとして11年ほど福岡で働きまして、このたびの転職で初上京した次第です。
――なるほど。同じ会社で長く働いて、初めての転職先に選んだのが名越スタジオだったのですね。
ジョナサン
ジョナサン・リーと申します。最初に就職したのは香港の小さなスタジオです。そこでは、電車のシミュレーションゲームなどの制作に携わりました。その後、モバイルゲーム制作の会社でゲームアーティストを担当して別の会社に移ったのですが、そこはすぐに解散してしまいました。
デザインが好きだったので、シンガポールのデザインスクールで本格的に学ぶことにしました。それからスクウェア・エニックスに入社して「ファイナルファンタジーXIV」の背景コンセプトアート制作などを経て、2022年4月に名越スタジオに入社しました。
池田
池田信一と申します。私は開発ではなく、前職はKADOKAWAでゲーム情報を発信する立場、具体的には「週刊ファミ通」と「ファミ通.com」の編集者をしておりました。
――さまざまな経歴の皆様が、なぜ名越スタジオを選ばれたのでしょう?
大井
小規模なIoTの開発も良かったのですが、大規模にゲームを制作しているほうがおもしろかったので、ゲーム開発に戻ろうかなと。そこで、フロム・ソフトウェア時代の同僚に名越スタジオで働いている人を紹介してもらって話を聞いてみたら、開発のスタイルやプログラマーとしての考え方が近かった。これなら、いっしょに仕事できると思ったことが大きな理由です。
優秀なエンジニアの知り合いは優秀なことが多い。つまり、そういう人が所属している会社は、職場環境もいいケースがほとんどです。そこで、信頼できる優秀な人についていこうと考えました。
小坂井
私の場合、一番の理由は「ハイエンドゲームで大きな仕事ができそう」だったからです。前職では比較的短い時間の中でベストを尽くす、という仕事をすることが多く、それはそれで楽しかったのですが、もう少し別の環境にも身を置いてみたいと思っていて。そんなときに名越スタジオの求人を目にしました。面接の際に話を聞いているうちに、私が思い描いていたものに近い環境でゲーム作りに携われそうだと感じたのが転職を決めた理由です。
ジョナサン
自分は、「ゼロから新しいゲームを作りたい」からですね。前職で携わっていた「ファイナルファンタジー」はものすごく有名なブランド(タイトル)で、完成された世界の中でモノ作りをする、という仕事はすごく楽しかったんですよね。ただ、その一方で、一人のアーティストとしては「もっともっと新しい世界やキャラクターを作りたい」という想いが強くなって。
池田
わたしは前職でずっと、「龍が如く」の記事制作を担当していたんです。10年程交流のあった名越から直接声をかけてもらったので、「この人のために何かやりたい」と思って転職を決意しました。私はゲーム開発ができる人間ではありませんが、スタジオのブランディングやプロモーションの分野でできることはあるだろうと。
入社して見えてきた名越スタジオでの働き方
――さまざまな経緯で名越スタジオにいらっしゃった皆様ですが、入社前に描いていたことは実現できていますか?
大井
入社して3ヵ月程ですから、今はまだ実現したとは言い難いです。開発の終盤まで来ないと見えないことも多いですから。ゲームを作りながら模索していく中で、いろいろ見えてくると思います。
小坂井
私も同じく転職して3ヵ月なので断言はできませんが、兆しは感じています。いまは、試しに作ったものを壊して作り直す研究期間の時期なのですが、「ゲームをおもしろくするために時間をかけて勉強できる」という環境は楽しいですね。
ジョナサン
入社してから3ヵ月ですが、すでに100枚以上のコンセプトアートを描きました。新しいゲームのための新しい世界を作っています。
池田
PR&マーケティング担当はいまのところ私一人ですが、立ち上がったばかりのスタジオで、やるべきことをゼロから設計して実行できるのは楽しいです。
――名越スタジオには元セガ、元龍が如くスタジオのクリエイターがたくさん参加しています。一方で、皆さんは別の会社からの転職です。お仕事の進め方などでギャップや問題は生じていませんか?
大井
名越と長く仕事をしてきたメンバーは、その経験や常識がベースになっています。10年20年と積み重ねてきたことに、外から来た者とのギャップが生じるのは普通のことですから、わからないときはどんどん質問をして、なぜそういうやり方をするのかを理解するように努めています。確かにベテランが多いんですけど、キャラクター的には穏やかな人が多くて、遠慮せずに聞きやすい印象があります。
小坂井
みんな集まっておやつを食べていたり、恵比寿グルメの情報を共有したりするなど、社内はとてもやわらかい感じです。(セガ以外からの)転職組にもとくに隔たりを感じることはなく、ウェルカムな雰囲気で受け入れてくれました。
名越スタジオはPCが高性能!クリエイターの就業環境は◎
――ほかに、名越スタジオならではの仕事の進め方や特徴はありますか?
大井
仕事の進め方といいますか……PCの性能がいいです!(笑)
全員
確かに!(笑)
ジョナサン
使用するタブレットについて入社前に希望を聞かれました。そして、希望どおりの物を用意してもらいました。
大井
私は必要なモニターの枚数を用意してもらいました。設立から間もない会社ですが、すでに広報やITの担当がいたり、オフィスの設備が充実していたりと、想像していたよりも会社としての環境が整っているのは良かったです。スタートアップだと、機材を秋葉原に買いに行ってネットワークの設定とかも自分たちで行うというのが普通だと思っていましたが、入社後、新しいゲームを作ることに集中できる環境でした。
小坂井
ベテランぞろいのところに入るのは不安もありましたが、皆さんとてもいい人で話しやすく、私自身はゲームをおもしろくすることだけを考えればいい。人間関係やコミュニケーションに悩むことは、まったくなかったです。
池田
クリエイター・名越稔洋との距離感がいいです。とても近い場所にいて、仕事のことはもちろん、ちょっとした雑談もできる。ゲームに関するクリエイティブとビジネスの両面について、日本でもトップクラスの知見を持つ人物といつでも気軽に話せるというのは、間違いなく財産だと思います。
――業務は基本的には出社して行うのでしょうか?
池田
はい。立ち上げたばかりのスタジオであり、ゼロから新規タイトルを作っていくわけで、まずはコミュニケーションを取りやすい環境を作ることが重要です。そのためには出社して仕事をしたほうがメリットが大きい、という名越の方針です。
ジョナサン
在宅(リモートワーク)にも良いところもありますが、やはり対面で仕事をしないとアーティストとして、人間としての成長は難しいところがあると思っています。いろいろな考え方がありますが、個人的にはクリエイティブな仕事をするためには、直接会える現場が一番ですね。
ユーザー目線を忘れないクリエイティブな仕事
――皆さんがゲームを制作する上で、一番大事にしていることは何でしょうか?
大井
やっぱりゲームのおもしろさを高めることに尽きるんじゃないでしょうか。プランナーとして、みんなで協力しながらシステムの組み立てや効率のいい作り方を考え、準備をして、ちゃんとゴール(完成)まで持って行きたいと思っています。
小坂井
開発が長期におよぶと、どうしても作る側の視野が狭まっておかしな難易度になってしまいがちです。高難度をウリにしているゲームであれば、それでも問題ないのかもしれませんが、できるだけユーザーが変なところで引っ掛からないようにしたい。目線の誘導ひとつ取っても、ユーザーファーストを忘れないよう心掛けています。
ジョナサン
ビジュアルアイデンティティーがユニークであること。そして、ゲームを作るプロセスを楽しむこと。作っている人がつらかったら悲しいですし、作っている人がハッピーなほうがいいゲームができます。前向きな気持ちは、クリエイティブにもいい影響を与えると思います。
――現在の開発状況をお話しいただける範囲で教えてください。
大井
プランナーから上がってきた仕様をもとに、いわゆるプロトタイプを作っているところです。
小坂井
ベースになる世界観やプロットは名越から出ていますので、それをどう料理していくかということを考えています。名越の作品は「ドラマを楽しむユーザーが多い」ので、ゲームの部分がハードルではなく、ご褒美になるように意識しています。
ジョナサン
最初に提示された世界観に合わせて、イメージボードをたくさん描きました。ゼロから世界を作り上げるので、ワクワクしながら描いています。
スキルよりも前向きに学ぶ姿勢が大切
――応募しようと考えている人に求めるものはありますか?
大井
ちゃんと「ゲームをリリースした経験」ですね。つらい時期を乗り越えた経験のある人がいいと思います。3DCGを使ったゲームであれば、ジャンルはアクションでもRPGでも構いません。
小坂井
プランナーに求めることは2つあります。まずは、「ゲーム以外のことにも見聞を広めている」ことです。経験の蓄積も重要ですが、つねに新しいエッセンスを取り入れることも大事になる職種ですから。弊社ですと、映画をたくさん観ている者が多いです。私は映画より漫画なんですけど。ゲーム以外のエンタメコンテンツから、物語や演出を取り入れ、ゲームに反映していくための引き出しがあることは大切です。もうひとつは、最低限の「コミュニケーション能力」があって、謙虚かつ真摯に作業に取り組めること。こちらも重要なポイントになります。
ジョナサン
いろいろなツールの知識があるといいですね。「ZBrush(ズィーブラシ)」「Marvelous Designer(マーベラスデザイナー)」「Houdini(フーディニ)」あたりをすでに使えるか、少なくとも学ぶ意欲があるといいと思います。
――ツールの習熟度について求めるレベルはありますか?
ジョナサン
わからないことは教えてもらえますし、教えることもできます。ツールは日々進化していきますし、新しい使い方もどんどん生まれるので、私たちもいつも社内勉強会を開いているくらいです。
大井
弊社のプログラマーにUnreal Engine 5の経験者はほとんどいないので、習得することがメンバーの課題になっています。私もほとんどさわったことがないので、時間を作って勉強したり、調べたことを共有したり、質問し合ったりしながら進めているところです。
Unreal Engineでのゲーム開発経験があるプログラマーならもちろんプラスにはなりますが、経験がなくても問題はないという認識です。それよりも、「コンシューマーゲーム開発」の経験があるほうが大切です。
――会社全体として、求めている人物像はありますか?
池田
今のところ100人を越えるような大きな組織は考えておらず、コンパクトな組織で、ワールドワイドのハイエンドタイトルを作っていきたいと考えています。それにはもちろん、外部企業様の協力が必要になりますが。いずれにしても社内は職種の垣根を越えて自由闊達に意見交換をする環境になるので、プロジェクト全体を見渡して、アイデア出しや提案ができるような人が望ましいと思います。
名越稔洋はロジックとハートのバランスがとれたリーダー
――名越さんがスタジオのトップを務めているというのが大きな特徴だと思いますが、名越さんを一言で表すとしたら、どんな言葉になりますか?
大井
雑誌などのインタビューを読んでいて、もっとアーティスト気質の、自己主張が強いタイプだと勝手に思っていたら、現実的なことをしっかり話す「ビジネスマン」でした。
小坂井
私が感じたのは「プロのリーダー」ということです。長年にわたって大きなチームを率いてきた経験からか、スタッフへの気遣いが細やかです。ミーティングでも皆の意見を聞きますし、(その意見が)ダメなときはダメな理由をしっとり話してくれます。
ジョナサン
思ったより優しい! とても有名なクリエイターなので、もっと近寄りがたい感じなのかなと思っていましたが、気さくな方ですね。(実績などを)自慢することもなく、今後のことに前向きです。
池田
みんな同じような話になっちゃいますね(笑)。映画にもなった「冷静と情熱のあいだ」という小説がありますが、まさに「冷静と情熱のバランスがとてもいい」クリエイターです。もちろん、クリエイターとしての情熱も強烈ですが、いっしょに働いてみたら、冷静に、ロジカルにものを考える人であることを再認識しました。以前のメディアの仕事で多くのクリエイターにお会いする機会がありましたが、高いレベルでそのあたりのバランスが取れている稀有な方なのではないでしょうか。
――最後に、これから名越スタジオに参加する人に向けてメッセージをお願いします。
大井
まだ1本目のゲームを作り始めたばかりなので、当然ながらスタジオのアイデンティティになるようなシリーズ作は持っていませんし、土台になるものもありません。それでも、開発に集中する環境は整っているので、その中で日々チャレンジしていけます。新しいことを取り入れることが好きで、いっしょにゲームづくりを楽しめる人にぜひ参加してもらいたいです。
小坂井
先ほども話が出ていましたが、とにかく穏やかな方が多いです。そうした部分でもすごくいい環境が整っていますので、ぜひ優秀なクリエイターさんに来てほしいですね。
ジョナサン
新しいゲーム、新しいIPを立ち上げることに興味がある人。そして、ツールの新しい使い方や技術を学びたい人が参加してくれるとうれしいです。
池田
いままさに、世界を熱狂させるゲーム作りがスタートしたところです。そういう熱い現場に参加したい人はぜひ応募してください。
- 株式会社名越スタジオ 大井圭介
- 株式会社フロム・ソフトウェアで数々のタイトルにプログラマーとして携わり、IoTベンチャーでの開発を経て2022年5月に名越スタジオに参加。ゲームの基礎部分からサーバーまで守備範囲は広い。
- 株式会社名越スタジオ 小坂井優一
- 新卒で株式会社レベルファイブに入社し、プランナーとして多くのヒット作を手掛ける。2022年5月に名越スタジオに転職し、現在制作中のタイトルではバトルプランナーとして腕を振るう。
- 株式会社名越スタジオ ジョナサン・リー
- 香港のゲーム制作会社数社を経て、株式会社スクウェア・エニックスで「ファイナルファンタジーXIV」の背景コンセプトアートなどを制作。さらなる成長を求めて、2022年4月に名越スタジオに参加した。
- 株式会社名越スタジオ 池田信一
- 株式会社KADOKAWA Game Linkageの「週刊ファミ通」および「ファミ通.com」の編集者として、数多の記事を制作。長らく「龍が如く」の担当をしていた。2022年4月にPR&マーケティング担当として入社。