
1990年代までは映画を原作としたゲーム制作が目立っていたものの、その後はゲーム原作の映画も増えています。また、Netflixなどの配信サイトが力を持つようになった現在は、配信ドラマの原作としてゲームが選ばれることもしばしばあります。ゲームと映像業界は、相互の制作環境に影響を与え合う関係を築いてきました。
本記事では、ゲームと映画の歴史を振り返りつつ、ゲーム原作の映像作品が増えた理由を探ります。なお、本記事では原作の再現度や製作背景を取り上げるため、実写映画をメインの対象として紹介します。
映画とゲームの関係は深く、ファミリーコンピュータ(ファミコン)以前の時代から映画が原作となるゲームがリリースされてきました。1980年代の家庭用ゲーム機は性能も限られていたため、実写である映画を再現することは困難でしたが、それでもさまざまな映画がゲーム化されています。そのおもな理由は、「観客動員実績のある映画は知名度が高い」「ゼロからオリジナルで作るより売れる可能性が高い」といったものだったようです。
そのため、ゲーム黎明期の映画のゲーム化は、多くがヒットした映画を題材としていて、リリースされるタイミングは映画の公開から時間が空くことが一般的でした。しかし劇場でのヒットを受けて許諾・制作される制作体制では、最も売れる時期を逃しており、実際に映画の興行収入に見合うヒットとなった作品(ゲーム)は必ずしも多くありません。
当時は、映画が劇場公開後に再び話題になる例も珍しかったといえます。当時の映画は劇場での公開が終わるとビデオ化され、その後はレンタルビデオ店で借りて見ることができましたが、ビデオ化から時間が経つと旧作として棚に埋もれて話題性は低下していきました。映画はテレビ放送でも再露出されましたが、劇場公開から一定の時間が経過した後だったため、よほどの話題作でもないかぎり劇場公開時のムーブメントは起きませんでした。これは映画原作のゲームにも当てはまる現象です。
それでも、ハリウッドの超大作や邦画のヒット作、香港映画などを題材にしたさまざまなゲームがつくられました。当時のおもな作品を見ると、国やジャンルを超えた幅広い映画がゲーム化されていることがわかります。
| 元になった映画 | 製作国・ 地域 |
劇場公開月 (日本) |
ゲームの発売月 | ハード |
|---|---|---|---|---|
| ロッキー | アメリカ | 1977年4月 | 1987年4月 | マスターシステム |
| スター・ウォーズ | アメリカ | 1978年6月 | 1987年12月 | ファミコン |
| スパルタンX | 香港 | 1984年12月 | 1985年6月 | ファミコン |
| ゴーストバスターズ | アメリカ | 1984年12月 | 1986年9月 | ファミコン |
| グーニーズ | アメリカ | 1985年12月 | 1986年2月 | ファミコン |
| 霊幻道士 | 香港 | 1986年4月 | 1988年9月 | ファミコン |
| マルサの女 | 日本 | 1987年2月 | 1989年9月 | ファミコン |
| ロボコップ | アメリカ | 1988年2月 | 1989年8月 | ファミコン |
| ランボーIII 怒りのアフガン | アメリカ | 1988年6月 | 1989年10月 | メガドライブ |
| スウィートホーム | 日本 | 1989年1月 | 1989年12月 | ファミコン |
| ガンヘッド | 日本 | 1989年7月 | 1989年7月 | PCエンジン |
このように1980年代の映画とゲームの関係は、映画がヒットするとゲーム化が企画され、劇場公開からしばらく経ってからリリースされるというものでした。
なお、リストにある作品では「ガンヘッド」だけが劇場公開と同月に発売されていますが、ゲームの内容は映画とほぼ無関係でタイトルだけを借りたようなものでした(実際はゲームのほうが映画の公開より早く発売されています)。また、「グーニーズ」が異例ともいえる早さでゲーム化されていますが、そのほかの作品は劇場公開から半年から数年程度かかっていることがわかります。
ゲーム原作の映画は、当初はゲームファンからの評価は必ずしも高くなかったものの、映画スタッフでゲームに親しんだ世代が増加したことや、映画の制作環境の変化などが要因となって、高い評価を得られるようになりました。
1990年代に入ると、ハリウッドで「スーパーマリオブラザーズ」「ストリートファイターII」「モータルコンバット」などのゲームが続々と実写映画化され、日本でも「ときめきメモリアル」が映画になるなど、ゲーム原作の映画という新しい潮流が生まれます。しかし、いずれの映画もゲーム同様の大ヒットとはならず、さらに原作のゲームファンからの評価もかんばしくありませんでした。
2000年代も映画化されるゲームは多く、「トゥームレイダー」「バイオハザード」「ブラッドレイン」「サイレントヒル」などは続編が公開されるなど、世界的にヒットする作品も現れます。ところが、娯楽として楽しむ映画ファンは増えたものの、原作ゲームが好きな層からの評価は決して高いものとはいえず、興行収入と評価のあいだにはまだギャップがありました。
その状況も2010年代以降に変化が見られ、ゲームファンの高い評価と高額な興行収入を獲得する作品が少しずつ増えていきます。これは、映画制作スタジオや興行会社の映画製作関係者の世代が変わってゲームを遊んでいた世代となり、ゲームへのリスペクトのあるスタッフが増えたことが要因です。
| 元になったゲーム | 映画の製作国・地域 | ゲームの発売月 (日本) |
映画の公開月 (日本) |
|---|---|---|---|
| スーパーマリオブラザーズ | アメリカ | 1985年9月 | 1993年7月 |
| ストリートファイターII | アメリカ | 1992年6月 | 1995年5月 |
| モータルコンバット | アメリカ | 1993年12月 | 1996年3月 |
| ときめきメモリアル | 日本 | 1994年5月 | 1997年8月 |
| トゥームレイダー | アメリカ | 1997年1月 | 2001年10月 |
| バイオハザード | アメリカ・ドイツ・ イギリス合作 |
1996年3月 | 2002年8月 |
| ブラッドレイン | アメリカ・ドイツ合作 | 2004年8月 | 2006年4月 |
| サイレントヒル | アメリカ | 1999年3月 | 2006年7月 |
| 龍が如く | 日本 | 2005年12月 | 2007年3月 |
| 逆転裁判 | 日本 | 2001年10月 | 2012年2月 |
| 名探偵ピカチュウ | アメリカ | 2018年3月 | 2019年5月 |
| ソニック・ザ・ヘッジホッグ | アメリカ | 1991年7月 | 2020年6月 |
| アンチャーテッド | アメリカ | 2007年12月 | 2022年2月 |
| ザ・スーパーマリオギャラクシー ・ムービー |
アメリカ | 1985年9月 | 2026年4月 |
また、映画の制作ツールとして、ゲーム制作でも使われているUnreal EngineやUnityが使われるようになり、「ゲームのCG制作スタジオが映画の映像に携わる」「映画の制作スタジオがゲームの映像を手掛ける」といった制作環境の変化が起きたことによる影響もあります。
家庭用ゲーム機の表現力が高まったことで、実写映画と変わらないクオリティの映像を再現できるようになった一方で、制作ツールの共通化により現実の俳優がゲームに登場できるようにもなりました。これは、ゲームの映画化についても同じことがいえます。ゲームでプレイした世界をそのまま映画で観られるようになり、これまで懐疑的に捉えられていた「ゲームの映画化」が、作品世界を拡げるものとして肯定的に受け取られるようになりました。
ゲーム原作の映画が多くの人に受け入れられるようになったとはいえ、映画が高い評価を得るためには、元になったゲームのファンに支持されることが重要です。
ゲームファンの中には、「私の好きなゲームが映画化された」と喜ぶ層だけでなく、「キャラクターの特徴がしっかり表現されているか」「物語は原作のゲームと整合性が取れているか」「映画のオリジナル要素がゲームの世界を壊していないか」といった評価基準で厳しい目で見る層もいます。このため、映画の観客には好評で世界的なヒットとなった作品でも、ゲームファンのあいだで評価が分かれることもあります。
例えば、「アンチャーテッド」の映画はゲームと異なるオリジナルストーリーでしたが、原作のファンにも好意的に評価された部分がありました。一方で「バイオハザード」は、映画としては続編が多く制作されるほど大ヒットになったものの、独自の主人公を立てた点で原作ファンからの評価は分かれています。同じく「トゥームレイダー」は映画もヒットしましたが、主人公の感情に焦点を当てた物語には賛否がありました。
また、日本映画では、2007年に公開された「龍が如く 劇場版」、2012年公開の「逆転裁判」などが、ゲームファンからは厳しい評価もあったものの、原作の雰囲気を一定程度表現できているとして評価を受けた作品のおもな例です。
2010年代後半から2020年代になると、「ソニック・ザ・ムービー」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」「名探偵ピカチュウ」といったアニメーション表現を採り入れた映画が、観客からもゲームファンからも高い評価を受けてメガヒットといえる興行収入を上げました。アニメーション表現の採用が高評価を得やすいのは、ゲームの世界をそのまま映像で再現していることが大きく影響していると考えられます。家庭用ゲーム機の性能が上がり、映画と同じ俳優がゲーム内でキャラクターを演じられるようになった昨今、ゲームと映画の差異の減少によってゲームファンからの評価基準も変わることが予想されます。
2020年代に入り、ゲームと映画のビジネスモデルはそれぞれ大きく変わりました。ゲーム業界では、家庭用ゲーム機の市場はコロナ禍の巣ごもり需要で大きく拡大したものの、その後成長スピードは鈍化。制作費が高騰した結果、リスクの高い新規タイトル(新規IP)を立ち上げることは難しくなっています。
そこで大きな力となるのが、映画を含めた映像化です。「先に映画やドラマを公開することで認知度を一気に高め、新規タイトルを軌道に乗せる」「既存の人気ゲームを映像化することで改めてファンの関心をつかみ、シリーズの続編を制作する」「過去のゲームタイトルを映像化して当時のファンに訴えると同時に新しい層にアピールし、その勢いを元に作品をリブートする」といった手法が検討されています。
また、映像業界にも変化が訪れています。例えば、かつては映画といえば劇場で鑑賞するかDVDを買ったり借りたりして見るものでしたが、2020年代以降は配信サイトで見る層も増えてきました。配信による収入は制作費の回収に大きな役割を果たすようになっています。ただし、観客に映画館に足を運んでもらうことで巨大なムーブメントが起きる構造は変わっていません。「Netflixで◯億人が視聴!」も謳い文句になりますが、「全世界興行収入◯◯◯億円突破!」と宣伝できることは大きなインパクトとなります。
制作費が高騰しているのは映画も同様のため、メガヒット映画を製作した監督やチームであってもまったくのオリジナルで映画を作ることは難しくなっています。そこで、すでに濃厚なファン層を持つと同時にキャラクターや世界観が確立されているゲームに、焦点が当てられるようになりました。ゲーム原作の映画は、ファン層の評価を得られれば一定の観客動員を見込める作品として、映像業界にとっても魅力的です。このため、世界的ヒットゲームの映像化権は、大手スタジオによる争奪戦の様相を呈しています。
映画の原作になるゲームは、基本的には世界的なヒット作品に限られていましたが、近年はインディーゲームから映画化されるものも増えています。2025年に公開された「マインクラフト/ザ・ムービー」の原作ゲーム「Minecraft」も、元は個人制作のインディーゲームです。また、同年に公開されて日本国内の興行収入ランキングで上位に入った「8番出口」も、元はインディーゲームでした。2026年2月には、ゲーム実況動画で人気に火がついた「夜勤事件(The Convenience Store)」の映画が公開されています。
ほかにもさかのぼると、2015年に2作連続で公開された「ハロウィンナイトメア」、インディーゲームからメジャーに引き上げられた「コープスパーティー」、2014年に第一作が公開されシリーズ5タイトルを重ねた「DEATH FOREST 恐怖の森」、公開時は一桁の映画館での上映だったものの最終的に80館まで拡大した「青鬼」といった作品が挙げられます。
| 元になったゲーム | 映画の製作国・ 地域 |
ゲームの発売・公開月 (日本) |
映画の公開月 (日本) |
|---|---|---|---|
| 青鬼 | 日本 | 2004年 (正確な公開月不明) |
2014年7月 |
| DEATH FOREST 恐怖の森 | 日本 | 2014年7月 | 2014年12月 |
| コープスパーティー | 日本 | 1996年4月 | 2015年8月 |
| ハロウィンナイトメア | 日本 | 2013年9月 | 2015年9月 |
| Minecraft | アメリカ | 2015年11月 | 2025年4月 |
| 8番出口 | 日本 | 2023年11月 | 2025年8月 |
| 夜勤事件 (The Convenience Store) |
日本 | 2020年2月 | 2026年2月 |
インディーゲームにはメジャータイトルのような知名度がなく、ファンの数もメジャータイトルに比べると限られていますが、その分映像化に関する権利のコストを抑えて映画を作ることができます。コアなファンに支えられたゲームが多い分、映像が原作を壊すものでなければ、SNSの口コミや複数回の観賞などで強力に後押ししてもらえることも見逃せません。オンラインのゲームプラットフォーム「Roblox」発のインディーゲーム「ブレインロットを盗む」のヒットなどを見ると、新しいゲーム体験に貪欲なユーザーは世界中に存在するため、映像化されるインディーゲームは今後も増えていくことが予想されます。
世界的なIPとなったゲームタイトルは、これからも続々と映像化されていくことが期待されています。2026年4月時点で映画制作が発表されているおもなタイトルは、「ゼルダの伝説」「ELDEN RING」「Call of Duty」「DEATH STRANDING」「HELLDIVERS 2」「Cyberpunk 2077」と大ヒットしたタイトルばかりです。ほかにも長らく映画化の噂が絶えない「メタルギアソリッド」、Netflixでドラマ化されたものの評価が低かった「バイオハザード」の再リブートにも期待が寄せられています。
また、「ソニック・ザ・ムービー」シリーズはすでに3作品公開されましたが、4作品目の制作を開始するという話もあります。加えて、「マインクラフト/ザ・ムービー」の続編、完全新作で「Ghost of Tsushima」などの制作も予定されており、多くのゲームファンが公開を待ち望んでいる状態です。
ゲーム業界と映像業界は、ともに市場が大きく変わり収益化の難度が上がった結果、より密接な関係を結ぶようになりました。2つの業界が協力していく流れは、今後も継続するものと考えられます。
もちろん、ゲームソフトはダウンロードする時代に移行し、映像鑑賞も配信サイトでの再生にシフトしつつあるため、ゲームと映像作品がテレビ、PC、タブレット、スマートフォンなどの画面を取り合う関係になっている面はあります。それでも、知名度の向上、堅実なファン層による支持の獲得、SNSなどでの普及が見込めるメリットは、双方の協力を生む魅力的な要素といえるでしょう。ツールの共通化が進み、制作環境の境界がなくなりつつある以上、両者の蜜月関係はそう簡単に壊れそうにありません。こうした変化に乗り遅れることなく、常にアンテナを張って最新のゲーム、映画の情報を集めることが、これからのゲームクリエイターのあるべき姿といえるのではないでしょうか。
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