
ゲーム開発は、アイディアの企画からプログラムやデザインの実装、テスト、リリースまで、さまざまな工程を経て完成します。一見複雑に思えるこの流れを理解することで、制作の全体像がつかめるだけでなく、業界の実務や転職活動にも役立つのではないでしょうか。
本記事では、ゲーム開発の基本的な流れや関わる職種をわかりやすく解説します。
ゲーム開発は、制作現場の中心となるディレクターが核となるアイディアを創出し、それをどのようにゲームとしてまとめるかを簡易な企画書にすることから始まります。ベースとなるアイディアをふくらませるために、企画段階からプランナーが参加するケースもあります。思いついたことをどんどん提案してより良い案を採用し、ゲームの骨格となる基礎を固めるのがこの段階です。
なお、企画時に事実上制作することが決まっている特定タイトルの続編や、複数の企業が関係して制作委員会を立ち上げるような有名キャラクターなどを使うゲームでは、プロジェクト全体の責任者となるプロデューサーが企画段階から参加することもあります。このようなケースでは、ゲームの方向性を現場レベルだけで決めることが難しく、予算やIP(Intellectual Property)のあり方を把握している人物が早期からコントロールしたほうが企画を進めやすくなるためです。IPとは、ゲームのキャラクターやタイトルなどを指す知的財産のことです。
企画を立てる際は、対象となるハードウェアの市場調査、想定ユーザー層の好みといった情報も同時並行で収集して、売れる企画へと仕上げます。企画書が完成したら、経営層や出資者が参加する会議で開発の承認を受けます。この会議では、最初に企画を立てたディレクターがプレゼンテーションを担当するのが一般的です。
企画段階の流れについては、家庭用ゲーム機、PC、アーケード、スマートフォンといった対応ハードによる違いはほとんどなく、参加するメンバーも上記と変わりません。
ゲーム開発は大きな予算が動くため、簡易な企画書をもとにいきなり開発を始めることはほぼありません。まず、「そのゲームを実際に遊んでみて楽しいのか」「思いついたアイディアを本当に実現できるのか」を知るための原型(プロトタイプ)を制作します。
プロトタイプの制作には、指示を出すディレクターだけでなくプログラマーも参加します。グラフィックはキャラクターや世界観がつかめる程度の仮素材にして、プログラムも本番仕様ではなく、シンプルで記述・修正が簡単な「Python」を使うことが多いようです。ほかにもPythonが選ばれる理由として、ライブラリーやフレームワークが充実していて、簡易的なプロトタイプを組むのに便利なことも挙げられます。
プロトタイプを制作し、プログラムを動かしたり遊んだりしてみて良いと思えるものができたら、次の段階は社内外の関係者へのプレゼンテーションです。このプレゼンテーションで、「企画が良い」「売れるゲームになりそう」という確信を得られれば、本格的にプロジェクトがスタートします。
なお、プロトタイプを制作すること自体や、参加するクリエイターの職種には、対応ハードによる違いはありません。
プロジェクトにGOサインが出たら、ゲーム開発を行うために必要な基本設計を行います。
プランナーがゲームの核となるゲームシステムやストーリー、キャラクター、UI(ユーザーインターフェース)を作成し、シナリオライターは物語を書き始めます。プログラマーによる、プログラムの構造設計、開発に使用するゲームエンジンの選定、インフラ周りの選定なども進めなければなりません。また、この段階でメイングラフィックデザイナーも参加し、世界観を定めるキービジュアルや主要キャラクターのデザインを行います。
ゲームの基本的な要素、開発に必要な環境が整ったら、最初の試作品となるアルファ版の制作を始めます。アルファ版はゲーム開始からエンディングまでではなく、冒頭だけあるいは1ステージだけを作るものです。部分的な開発であっても、この出来によって次の段階に進めるかどうかを判断する重要な段階です。
アルファ版はプロトタイプとは異なり、グラフィックもプログラミングも本番仕様の環境で制作を進めます。グラフィックデザイナーは、下記のような複数の専門的なクリエイターが参加します。
プログラマーも、基本となるゲームプログラマーだけでなく、サーバープログラマーやインフラエンジニアが加わり、サウンドクリエイターが楽曲の制作を開始するのもこの段階です。ここに来て、ようやく開発チームの全員が顔をそろえることになります。
アルファ版の制作時に下記のような事態が発生した場合、企画内容や仕様の見直しといった方向性の大幅な変更、予算の見直し、プロジェクトの中止といった重要な経営判断が下されることもあります。
アルファ版の制作を行うこと、クリエイターが各職域において専門化すること、チームの全体像が見えてくることなどについても、ハードによる違いは存在しません。ただし、家庭用ゲーム機やPC向けの場合は、スマートフォン向けに比べ参加する人数が多くなる傾向があります。
アルファ版が完成し、プロデューサーや経営陣、出資者などの理解が得られたら、次に作るのは製品版により近づいたベータ版です。クリエイターが行うことはアルファ版の制作と変わりませんが、より多くの人数が投下されて開発速度を上げることが求められます。
開発ツールに目を向けると、グラフィックデザイナーはどのハードでもほとんど変わりません。ただし、ゲームの内容が2Dの場合と3Dの場合でツールは異なります。プランナーやサウンドクリエイターも同様です。
もっとも、プログラマーの場合は傾向が異なります。特にゲームエンジンとプログラミング言語はハードによって大きく変わり、家庭用ゲーム機やPC向けに莫大な予算を投じて開発するAAAタイトルなどの大規模なゲームでは、ゲームエンジンは「Unreal Engine」、プログラミング言語は「C++」が一般的です。Unreal Engineが選ばれるのは、世界中の開発現場で使われていることからライブラリーが充実しているほか、技術情報を得やすい点などが理由です。
一方、スマートフォンゲームの開発では「Unity」と「C#」の利用率が高いといわれています。シンプルな構文で習得しやすく、2Dと3Dどちらのゲームにも対応している点が理由となっているようです。
また、HTML5などのブラウザ上で動作するゲームの場合は、Webとの親和性が高い「JavaScript」の割合も高くなります。JavaScriptによるプログラムは特定のOSに依存せず動作するため、スマートフォンやタブレット、PCなど多くのデバイスで動くゲームを作りやすいことが影響しています。
ベータ版の制作が終盤に入ると、テストエンジニア(テスター)によるゲームのテストプレイも行われます。テストプレイの目的には、そもそもゲームとして面白いかどうかの評価が含まれる場合もありますが、おもな目的はハード上で問題なく動作するかどうかを調べることです。
テストプレイの結果によって、UIやセーブ・ロードなどが正しく動作することを確認する機能チェック、おもにプログラミングのミスを見つけるデバッグ、処理速度などのパフォーマンス評価、敵の強さを変えるバランス調整などを実施し、問題があった箇所を修正しながらテストプレイを繰り返します。
テストプレイは専門の会社も存在し、大きなプロジェクトであればハードを問わず外注することも増えました。比較的小規模なスマートフォンゲームの場合、短期的なアルバイトを雇って行ったり、チーム内や社内の人間だけで済ませたりするケースも見られます。
また、多人数が同時プレイするオンライン対応ゲームの場合は、テスターをユーザーに依頼することもあります。公募して依頼する場合はオープンベータテスト、限られた条件でユーザーを探す場合はクローズドベータテストと呼ぶのが一般的です。
テストプレイで発見したバグなどの問題を可能な限り修正し、ユーザーが遊ぶのに支障がない状態になったら、製品版の制作準備に入ります。Webやメディアを通じたプロモーション活動、パッケージ・マニュアルなどの制作など、プロデューサーやディレクター、プランナー以外のクリエイターが直接関与しない作業もありますが、配信に向けた環境の整備などはプログラマーが中心となって行うこともあります。
製品版の販売前には、家庭用ゲーム機の場合はハードウェアのメーカーに、スマートフォンゲームの場合はGoogleやAppleに審査に依頼して許可を得なければなりません。PCでも、Steamなどを通じて販売する場合は同様です。近年は、特にゲーム内の人種、性別、宗教などに関連する表現に指摘が入ることもあり、この段階でも修正が発生するケースがあります。
ゲームが無事に発売されてもクリエイターの仕事は終わりません。かつての家庭用ゲーム機のようにパッケージ販売であれば、完成・発売でプロジェクトは完結し、参加したクリエイターには長期休暇や大きな報酬が与えられるという流れもありました。
しかし、現在のゲームはパッケージ版もダウンロード版もあり、多くのゲームではネットワークに接続することが前提となっています。ネットワーク接続を前提とするゲームでは、サーバーのメンテナンスやネットワーク環境の保守を24時間365日体制で行わなければなりません。そういったゲームの開発に参加したサーバープログラマーやインフラエンジニアは、サービスが続く限り仕事が続きます。また、発売後に発覚したバグの修正も求められるため、ゲームプログラマーも即応できるようにしておくことが必要です。
加えて、ユーザーからの問い合わせに答えるサポート部門も準備しなければなりません。対応を間違えるとSNSなどで炎上し、ゲームの評価だけでなく株価などに影響を与えてしまう可能性があります。サポート業務は外部の専門会社に委託することもできますが、規模が小さいスマートフォンゲームの場合は社内で対応するケースも少なくありません。そして、ユーザーへの回答には、プランナーやディレクターが関与するケースもあります。
ゲームの売上は、発売直後が一番大きくなりますが、日が経つにつれ下がっていきます。プレイ人数が減ると、サブスクリプションの売上やゲーム内アイテムの販売数なども下がり、サービスの維持ができません。開発にかけたコストを回収し利益を上げつづけるには、定期的なアップデートや、キャラクター・ストーリー・機能の追加は不可欠です。
ユーザーの離脱を防ぐため、ディレクターは魅力あるアップデートの計画を立て、グラフィックデザイナーやプログラマーは計画の終了まで、またはサービスの終了までアップデートに対応し続けることになります。
ゲーム制作は、企画からアルファ版・ベータ版の制作、テスト、販売、運営まで、多くの専門職が関わるチームワークの結晶です。各工程を把握することで、業界の仕事の役割分担や必要スキルをより明確に理解でき、自身のキャリア形成にも大きなヒントとなるでしょう。
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