
近年、配信の世界では、実在の人物がさまざまなコンテンツをみずから発信する「YouTuber」から、2Dや3Dのキャラクターが出演する「Vtuber」へと、注目の対象が変わりつつあります。これは視聴者の趣向が変わったというだけではなく、芸能人やYouTuberにつきまとうネガティブな話題がVtuberには発生しにくいという、昨今のテレビ・映像業界の事情も関係しています。芸能事務所のように多くのVtuberを抱える企業がいくつも立ち上がり、多くの企業や自治体がPR活動に採用するなど、社会的認知も広がってきました。同時に、Vtuber関連のクリエイティブ職も増加しています。
中でも、キャラクターを作る2Dデザイナー、それを動かす3Dデザイナー、ライブ配信を支えるエンジニアは、ゲームクリエイターとの親和性も高く、ゲーム制作でキャリアを積んだ人にとって有力な転職先です。また、Vtuberが出演するライブイベントも頻繁に行われるようになり、ネットワークエンジニアが活躍する場面も増えています。
本記事では、実際のVtuber関連企業でクリエイターが求められる能力、ゲーム制作と似ているようで異なる業務内容などを網羅的に紹介します。ゲーム制作やアプリ開発、映像制作という従来の転職先とは一線を画すVtuberのクリエイティブ職への道を目指してみませんか。
Vtuberには、2Dのイラスト(原画)をそのまま動かす「Live2D」と、イラストをもとにキャラクターをモデル化して配信する「3D」という2通りの方式があります。どちらの方式を採用するにしても最も重要なのが、まず2Dで魅力的なキャラクターデザインを描き起こすことです。ゲームやアニメはもちろん、「既存のVtuberと重ならない人物を生み出す=オリジナルキャラクターを描ける」デザイナーは、新たなVtuberを生み出したい企業にとって最も重視するポイントとなります。ゲーム制作の現場で多くのキャラクターイラストを手掛けてきたクリエイターは、のどから手が出るほど欲しい人材でしょう。
具体的には、現在人気があるキャラクターではなく、今後人気が出そうな顔立ちやプロポーション、髪型、衣装、小物などを描ける人が求められています。ただキャラクターを描くだけでなく、どのような人物なのかといった背後にある物語も含めて造形できれば、衣装や小物にも説得力が出せますが、あらかじめ用意されたキャラクター設定に沿って描ける柔軟性も必要です。
この分野にはpixivが開発した「VRoid Studio」のように、3Dキャラクターを簡単に作れるツールもあり、これにより、まったく知識や技術がなくてもVtuberをデザインできるようになっています。さらに、AIにキャラクターを描かせる企業や個人も増えてきています。名のあるクリエイターがデザインすれば必ず人気が出るとは限らず、どれだけ作り込んだキャラクターだったとしても競争を勝ち抜けるわけではありません。なお、Vtuberのキャラクターデザインは、競合が増えているなどの理由から年々難しくなっていますが、それだけに人気が出たときの喜びは大きく、やりがいのある仕事といえます。
イラストをそのまま動かすLive2Dには、「低コストでVtuberを始められる」メリットがある一方で、「キャラクターを大きく動かす配信やイベントで映えない」というデメリットもあります。そのため、多くの企業が3Dモデリングされたキャラクターを求めるようになり、3Dデザイナーが活躍できる場面が増えています。中でも、無料で使えるオープンソースの3D制作ソフト「Blender」は、ゲーム制作でも広く活用されており、Vtuberのキャラクターモデリングにおいても主流のツールです。そのため、ゲーム開発で培った3Dモデリングのスキルは、Vtuber制作の現場でもそのまま活かすことができます。
また、配信の背景となる舞台(ライブのステージ・スタジオのセット)も3D化が進んでおり、ゲームのステージを作ってきた3Dデザイナーであればスムーズに業務に入れます。超リアル系からファンタジー、トゥーン調まで、Vtuberの人物像や舞台設定、イベント内容に合わせて制作する点はゲーム制作と変わりません。
特に、音楽系のライブ配信で顕著ですが、エフェクトやライティングに注力するVtuberも増えています。アイドルのコンサートのように華やかな舞台演出は、ファンタジー、SF、ダーク系といったゲームのエフェクトやライティングとは求められる方向が異なる場合もあるため、注意が必要です。
こうしたVtuberの制作現場では、ゲーム開発でもおなじみの「Unity」が多くの場面で使われています。リアルタイムの3D描画やアニメーション、エフェクト処理に優れたUnityは、Vtuberの配信・ライブイベントにおける演出にも適しています。そのため、Unityに対応したソフトウェアを使用してきた人であれば問題なく対応可能です。可愛らしい女性キャラクターや格好いい男性キャラクターがたくさん登場するゲームに携わってきたクリエイターであれば、すぐに第一線で活躍できるでしょう。
画面の中でリアルな動きをすることは、Vtuberの人気を左右する大切な要素です。どれだけ可愛らしい・格好いいキャラクターができても、それを魅力的に動かすエンジニア(プログラマー)がいなければVtuberは成り立ちません。演出を行う人の求める動きを自然に見せる、演じる人の動きをそのまま再現する、セリフと口の動きを合わせる、微妙な表情をしっかり見せる、などゲームでディレクターやプランナーの指示に合わせてキャラクターを動かしてきたエンジニアが得意とするスキルは、Vtuberの世界でも有効です。
もちろん、エンジニアの仕事はキャラクターを動かすだけにはとどまりません。配信するアプリの要件定義や設計、開発から運用までを一貫して担います。また、3Dデザイナーが制作した舞台や背景などを正確に設置することも求められるでしょう。さらに、演じる人物の動きをVtuberのものとして取り込むモーションキャプチャー、それを3Dキャラクターに動作として付けるトラッキングもエンジニアの領域になります。
ほかにも、Vtuberにとってビジュアルと並んで大切な声やBGM、効果音などを制作するサウンドエンジニア、視聴数と視聴者の動向、ライブ配信中に視聴者が配信者に送金する投げ銭機能の「スーパーチャット(スパチャ)」などの分析を行うデータ分析エンジニア、サーバーなどの運用を行うインフラエンジニアも重要です。
Vtuberの運営では、企業の広告案件や自治体からの広報依頼、Vtuber自身によるグッズ販売などが主な収入源となります。企業広告や自治体広報などの案件を獲得するには、外部との交渉や提案を行う営業的なポジションが必要です。一方、グッズ販売には在庫管理や製造管理などを担当するポジションが求められます。こうした多面的な運営体制を整えるためには、一定以上の企業規模や組織力が不可欠です。
そこで重要になるのが、視聴者によるスーパーチャット(スパチャ)です。ある程度固定ファンをつかめば「通常配信(事前収録したコンテンツの配信)」による収入は見込めますが、視聴者とのリアルタイムな交流や盛り上がりによって収益が大きく伸びやすい「ライブ配信」が、Vtuberにとっては特に重要な収入源となります。ライブ配信では、遅延や中断といった不備があると大きな機会損失になるため、これらの問題を起こすことなくやりきれる環境を整え、現場で突発的なトラブルにも即応できるネットワークエンジニアの存在が欠かせません。回線の敷設、イベント会場での映像伝送、視聴環境に応じた配信の最適化など、幅広い業務に携わった経験がVtuberのライブ配信でも活かせます。
Vtuberの世界でも、プランナーやディレクターに相当する業務があります。例えば、Vtuberを企画・プロデュースする際には、「どういった世界観・性格を持たせるのか」といったコンセプトやキャラクターの設定を行ったり、配信の軸となる物語などを構築したりします。また、尺(時間)に合わせて演出内容をタイムラインに沿って組み立てる、グッズの内容・販売時期・販売方法を計画し、最適な形で実施する、といった業務も含まれるでしょう。これらの仕事は、Vtuberを運営する企業やプロダクションを中心に多数存在します。ゲーム制作の現場でオリジナルIPを立ち上げた、ムービーを演出した、シナリオを書いた、グッズ制作を一から行った、といった経験はVtuber関連企業でも大いに活かすことができます。こうした経験を持つ方であれば、プランナーやディレクターといった職種への転職も十分に可能です。
Vtuberの制作がゲーム制作と大きく異なるのは圧倒的なスピード感です。ゲームの場合、多くのクリエイターが数年かけて1つの作品を作り上げるのが一般的ですが、Vtuberは短いスパンで作品(配信映像やライブ配信)を出します。発注から確定までの期間が短いので、キャラクターデザイナーには指示を受けたらすぐにラフ案を仕上げたり、短時間で清書まで完成させたりできるような筆の速さが必要です。3Dデザイナーも同様で、極端なケースでは「今夜のライブ配信に必要」といったデザイン発注すらありえます。各種エンジニアもそれに合わせた即応体勢が求められます。
Vtuberの制作現場は、リアルタイムで進行するライブ配信のようなスピード感と臨場感にあふれています。日々新しい企画や技術が求められるため、常に挑戦を続けなければ、Vtuberもクリエイターもすぐに時代に取り残されてしまうような世界です。ゲーム制作とは異なるスピード感が求められるVtuberの制作は、慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。しかし、使用するツールは慣れ親しんだものであり、ゲーム制作で培ったスキルをそのまま活かせる現場です。シリコンスタジオでは、新たな挑戦を求めるゲームクリエイターにとって魅力的なVtuber関連企業への転職サポートにも力を入れております。興味をお持ちのクリエイターの方は、是非一度シリコンスタジオエージェントにご相談ください!
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