近年、家庭用ゲーム機やPC、そしてスマートフォンで実写と見まがうような映像(画像)を表現できるようになりました。ユーザーは、そういったハードの性能に見合うハイクオリティなゲームタイトルを求めるようになっています。こうしたユーザーの要求に応えるため、ゲーム制作の現場には膨大な時間と多くのスタッフとともに安定した制作環境が欠かせません。
そこで生まれたのが、ゲーム制作の過程で生じるさまざまな処理を共通化するソフトウェアである「ゲームエンジン」です。ゲームエンジンを導入することで、多くのクリエイターが同一環境でゲームを制作できますし、かつてはタイトルごとにゼロから構築していたプログラムが簡略化でき、場面単位やパート単位でつけていた演出などを自動化できるようになりました。
今や、ほぼすべてのゲーム制作現場で利用されているゲームエンジンには、世界のゲーム制作会社・個人が使っている汎用タイプと、ゲーム制作会社が独自に開発したタイプの2種類に分かれます。それぞれの特長や歴史、使われたタイトルなどをまとめました。

世界中の開発者が利用し、ゲームエンジンの代名詞的存在といえるのが、Epic Games(エピック ゲームズ)社の「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」と、Unity Technologies(ユニティ・テクノロジーズ)社の「Unity(ユニティ)」です。
Unreal Engineは元々、「Unreal」というゲームのために作られたゲームエンジンでしたが、これをライセンス販売したところ多くの開発会社が採用。2015年には無償提供を開始したことにより、当時盛り上がりを見せていたインディーズゲームの制作者にも普及していきます。
現在はゲーム以外の業界(映画・テレビ番組の制作や、建築・自動車の設計など)でも、使い勝手の良い3DCG制作ツールとして広く利用されるようになりました。
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Unreal Engine(アンリアルエンジン)とは?|ゲーム業界用語解説Unityは、2005年に公開されたゲームエンジンで、当初はMac OSでの開発に特化したものでしたが、バージョンアップを重ねてマルチプラットフォームに対応。家庭用ゲームやPCのゲームなどで幅広く活用されるようになりました。
Unreal Engine同様、2015年に無償で利用できるようになり、特にスマホアプリ(ゲーム)の制作において欠かせない存在となっています。
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Unityとは|ゲーム業界用語解説2010年代、スマートフォンが爆発的に普及し、ゲームはテレビの前で遊ぶものではなくなっていきます。そして、家庭用ゲーム機やPCと比べ処理能力が限定的なスマートフォンでは、昔ながらの2D表現が見直されていきます。
そこで活躍したのが、2008年にリリースされた、2Dアプリに特化したゲームエンジン「Cocos2d」です。
中でも需要の高いプログラム言語「C++」に対応した「Cocos2d-x(ココスツーディーエックス)」は、長らくスマートフォン向けゲーム制作のトップランナーとして君臨します。なお、現在はUnreal EngineやUnityも2Dに注力しており、かつての圧倒的なシェアは失われましたが、それでも多くのスマホアプリ制作で利用されています。
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Cocos2d-x(ココスツーディーエックス)とは|ゲーム業界用語解説ハードウェアの進化に伴ってゲームで実現できる表現の質が高まった結果、初期のアーケードゲームやファミリーコンピュータの頃は数人で行えていたゲーム制作は、多くのクリエイターが参加して長い時間をかけて行うものになりました。
また、同じ建物の同じフロアに集まって作るのではなく、拠点を国内外に分散し、協力会社や個人クリエイターの力を借りるようになったことで、チーム内の意思統一や作業の進捗確認などが難しくなっています。
ゲームエンジンは同一環境で制作を行えるため、各クリエイターがどこで作品を作ったとしても、成果物を統合することが容易ですし、既存のアセット(2Dや3Dのモデルや背景などゲーム制作に使うパーツ類)の利用や、制作物を共有することで工程を短縮することもできます。しかし、Unreal EngineやUnityを使用すると、完成したタイトルの売上に応じて開発会社にロイヤリティを払う必要や、制作中のタイトルで使いたい機能が不足しているケースも出てくるようになりました。
そこで、特に巨額の開発資金を投じるAAAタイトルを制作するような大手制作会社は、クリエイターが求める機能をより使いやすいように実装し、制作中に生じた(ゲームエンジンの)問題に迅速な対応が可能となる内製ゲームエンジンを開発するようになっています。
ゲームエンジンを一から構築するためには相応の投資も必要ですが、複数のタイトルで使い回すことで負担を分散し、ロイヤリティが発生しないことでタイトル販売後の支払額を抑えることも可能です。さらに、ゲームエンジンの開発で技術的なノウハウを蓄積でき、場合によっては特許などの副産物も生まれるようになりました。
多くのクリエイターを抱える大手メーカー各社は、開発費の高騰を抑えると同時に、制作の効率化を目指してさまざまなゲームエンジンを内製してきました。ここでは、代表的なゲームエンジンとおもなタイトルについて紹介します。
「RE ENGINE」は、カプコンが長らく使用していた「MT Framework」というゲームエンジンをさらに進化させたゲームエンジンで、2017年の「バイオハザード7 レジデント イービル」から採用されました。ほかにも、「ストリートファイター6」「デビル メイ クライ 5」「バイオハザード RE:4」などの制作にも使われています。
「Katana Engine」は、ゲームエンジンの内製にこだわってきたコーエーテクモゲームスによるゲームエンジン。「無双」シリーズや「ライザのアトリエ」シリーズなど、同社を代表するタイトルで使われているほか、世界的に知られる開発チームTeam NINJAの最新作「Wo Long: Fallen Dynasty」もKanata Engineで制作されています。
コナミデジタルエンタテインメントで、小島秀夫氏が率いていた小島プロダクションが開発したマルチプラットフォーム対応のゲームエンジンが「FOX ENGINE」です。「メタルギアソリッドV ファントムペイン」や「ワールドサッカー ウイニングイレブン」シリーズで採用されました。
「Cyllista Game Engine」は、スマホアプリで数多のヒット作を生み出したサイゲームスが、ハイエンド機でのゲーム開発に向けて内製しているゲームエンジンです。2023年3月現在、このゲームエンジンを使って制作していることが明らかになっているのは「Project Awakening(仮題)」だけとなっています。
「OROCHI 4」は、家庭用ゲーム機と携帯ゲーム機の同時開発にも強みを発揮する、シリコンスタジオが開発したゲームエンジン。おもに国内の制作会社が採用しており、「Death end re;Quest2」「LEFT ALIVE」「ワールド オブ ファイナルファンタジー」などがこのゲームエンジンを使って制作されました。
「Luminous Engine」は、「ファイナルファンタジーXV」のスタッフが集まったスタジオ「ルミナスプロダクションズ」が開発した次世代機(PlayStation 5やPCなど)用のハイエンドなゲームエンジン。2023年1月24日発売の「FORSPOKEN」でも表現力の高さを見せつけました。
なお、同スタジオは、グループ再編により2023年5月1日にスクウェア・エニックスに吸収合併される予定です。
「ドラゴンエンジン」は、「龍が如く」シリーズのために作られたゲームエンジン。テストプレイを自動で行ってエラーを検知するシステムなど、独自の技術を多く搭載しており、CEDEC2021のエンジニアリング部門で最優秀賞を受賞しています。しかし、シリーズ最新作ではUnreal Engine 5への移行をプロデューサーが発表しており、後継となるゲームエンジンが開発されるかは未知数です。
「Hedgehog Engine 2」は、「ソニックワールドアドベンチャー」(2008年)のために開発された「Hedgehog Engine」の後継的なゲームエンジン。「ソニックフロンティア」「マリオ&ソニック AT 東京2020オリンピック」など、同社の看板キャラクターであるソニックが関わるタイトルで使われています。
「PhyreEngine」は、元々はPlayStation 3のゲーム制作会社向けに提供されていたゲームエンジンでしたが、マルチプラットフォームに対応しており、ライバルである任天堂やマイクロソフトのゲーム機向けのタイトルも制作も行うことができます。「ドラゴンクエストビルダーズ」シリーズもこのゲームエンジンを使用しています。
「NintendoWare Bezel Engine」は、Nintendo Switchのサードパーティーに向けて任天堂が開発したゲームエンジン。同社の「スーパーマリオパーティ」シリーズ、「世界のアソビ大全51」「TETRIS 99」などはNintendoWare Bezel Engineを使用して制作されました。
Unreal EngineとUnityはあまりにも有名ですが、ほかにも世界的にヒットしたタイトルで採用されたゲームエンジンはいくつも存在します。ここでは、FPSの金字塔「DOOM」の時代からゲームエンジンを取り入れてきたアメリカのメーカーを中心に、現在も広く使われている海外メーカーのゲームエンジンを集めました。
「CryENGINE」は、Amazonが開発した「Amazon Lumberyard」(Open 3D Engineに継承)のベースになったCrytek社のゲームエンジンです。同社のFPS「Far Cry」シリーズや、エレクトロニック・アーツの「Crysis」シリーズで使われています。
世界中の制作会社が採用しているメジャーなゲームエンジン「Unreal Engine 4」。国内の主要タイトルでも「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」「ファイナルファンタジーVII リメイク」のほか、アーケードゲームの「機動戦士ガンダム 戦場の絆II」「電車でGO!!」などが採用。海外でも「Fortnite」「Gears of War 4」「PLAYER UNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」と有名タイトルが並びます。
「Unreal Engine 5」は、Unreal Engine 4の後継として2020年に発表され、2022年4月に公開されたゲームエンジンです。ハイエンドタイトルに向けて各機能が強化されており、「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」「Fortnite Chapter 3」などが制作されたほか、「ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎」もUnreal Engine 5で制作中です。
ゲームエンジンの「DECIMA」は、開発元のGuerrilla Games社の親会社がソニー・インタラクティブエンタテインメントのため、プレイステーション向けのタイトルで使われるケースがほとんどです。おもなタイトルでは「DEATH STRANDING」「Horizon」シリーズなどで採用されています。
「Havok Physics」は、Havok社が開発したゲームエンジンで、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」「デッドライジング2」「Demon's Souls(デモンズソウル)」などが採用しました。
「IW Engine」は、ハードの売上を左右する作品となったFPS「コール・オブ・デューティ」シリーズで長らく使われてきたゲームエンジン。2019年の「コール・オブ・デューティ モダン・ウォーフェア」から新エンジンに切り替わりました。
世界で最も使われているゲームエンジンである「Unity」。「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」「ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール」「原神」「ポケモン GO」「ウマ娘 プリティーダービー」といった話題作で使われました。また、リトアニアの小さなスタジオが制作してロングセラーとなった「ヒューマン フォール フラット」や、個人制作のインディーズタイトルなど、数多くのタイトルで使われています。
「Open 3D Engine 」はAmazonがゲーム事業に参画したときに開発したゲームエンジンで、2021年にオープンソース化されました。ただ、採用を発表したのは「Deadhaus Sonata」など、一部のタイトルに限られています。
「Cocos2d-x」は、すべての機能を無料で使えることもあり、2Dアプリの制作には欠かせなかったゲームエンジンです。「モンスターストライク」「LINE:ディズニー ツムツム」といった超人気タイトルを生み出しました。
AAAタイトルはもちろん、PCや家庭用ゲーム機のゲーム、比較的小規模なスマホアプリ、個人開発者によるインディーズタイトルまで、今やゲームエンジンなしで制作することは難しくなっています。
どのような現場で働くとしても、クリエイターである以上避けて通れないゲームエンジン。特に、UnityとUnreal Engineの動向は常にウォッチして最新の情報を仕入れたり、業務外でもふれたりするなど、スキルを磨いておくことが大切です。
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