2022年のプラットフォーム(3大コンシューマー機、PC、スマートフォン)の動向について、ゲームアナリストの平林久和氏に展望を伺いました。
コンシューマー・PC・スマートフォンという従来のくくりではなく、各プラットフォーマーおよびIT大手は、さらにその先を見据えた動きを早めています。中でも、平林氏が注目するのがクラウドゲームです。
ゲームクリエイターや開発会社にとっては、タイトルの提供先が増える効果が期待できますが、世界市場をどこが押さえるのか、それとも群雄割拠となるのかなど、黎明期ならではの選択の難しさはありそうです。
ハード・ソフトともに販売好調が続くだろう。インディゲームの良作も増えそう。現在、任天堂は従来のゲームにこだわらない事業展開をしている。 わかりやすい例を挙げればUSJ「スーパー・ニンテンドー・ワールド」や直営店の運営だ。「マリオカート ライブ ホームサーキット」のように、画面外の要素をからめたゲームづくりにも注力している。 ゲーム以外の分野でも、ものづくりに実績がある人材が活躍できる環境にある。
PlayStation 5は従来の1~4とは発売元が異なる。PS5ではソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)から、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)に変わった。 これは単なる社名変更ではない。SIEは米・カリフォルニア州サンマテオに本社を置く。SIEは米国拠点の企業となり経営体制が根本から変わった。ゆえに日本市場に適したソフトが少ないのは致し方ない。 当初の計画のとおりでグローバル市場においては好調を維持する。
昔のゲーム業界地図ではPlayStationとXboxはガチでぶつかるライバル機だった。だが、今は違う。2019年以降、ソニーとマイクロソフトはクラウドサービスや人工知能の分野で提携関係にある。 後述するが、クラウドゲームの分野に相次いで参入するビッグテックに、競合相手だった両社は提携して対抗しようとしている。 ちなみにPS5とXboxSS/SXは、超高速SSDを標準装備、半導体メーカーAMD社製の高性能な8コアCPUを装着など仕様もかなり似通っている。
日本という国は歴史的な背景からPCゲームのユーザーが少ない。インベーダーブーム以降ゲームセンターが街中にでき、任天堂やソニーが家庭用ゲーム機を真っ先に日本で売ってきたからだ。 世界の国々ではPCゲームユーザーが多い。コンソールゲームの人口が8億人に対してPCゲームの人口は13億人という統計データもある。PCゲーム市場では「Steam」の動きに注目したい。ダウンロード販売だけではなく、ユーザーコミュニティも含めた巨大プラットフォームとなっている。
世界で最も大きなゲーム市場はスマホゲームの市場だ。コンソールが約4兆円に対してスマホゲームは12兆円にもなる。「ガチャ課金」のビジネスモデルによって高収益を確保している。 日本・中国・韓国・台湾などアジアでの売上が、スマホゲーム市場全体の約半分を占める。2022年に「パズル&ドラゴンズ」が登場してから10年になる。運営次第でヒットが持続する。 そのため、技術革新が起きそうで起きない。5Gやブロックチェーンなど最新技術をもっと取り入れてもいい分野である。
ハードに依存しないサービス。クラウドゲームに注目する。サーバ内にソフトウェアを格納してユーザーが操作する端末に逐次データを送信する。簡単に言うとSpotifyやYouTubeのゲーム版だ。 古くからある概念だが、近年は「次世代のゲーム」として大手企業が相次いで参入してきている。Googleの「Stadia」、Amazonの「Luna」、NVIDIAの「GeForce NOW」など。 2021年夏にはNetflixもゲーム配信に参入を表明した。AppleやFacebookもゲームの月額定額制サービスを開始している。
マクロの視点で見るとクラウドゲームの動向は見逃せない。まだ普及期ではないし、サービス自体も通信ラグがあって不十分だ。だが、長期スパンで見れば産業構造を変える存在…と多くの業界関係者が気にしている。 ゆえに、ソニーとマイクロソフトは「ハード販売勢力」として提携したし、任天堂はクラウドではできない「場」を開拓する。クラウドゲームを、ゲームの世界で起きているDX(デジタルトランスフォーメーション)と捉えると、見えないものが見えてくるだろう。
1962年生まれ。神奈川県出身。1985年、青山学院大学を卒業後、株式会社ジェイ・アイ・シー・シー(現・宝島社)に勤務。
ゲーム専門誌を創刊。同誌の編集者・記者となる。
1991年、「ゲームに詳しい」を売り物にしたコンサルティング会社、株式会社インターラクトを設立。ソニー、リクルートなど、ゲーム業界新規参入企業のサポートを開始する。
1993年、新聞紙上にて日本で初めてゲームのことを論述する日刊連載。日本のゲーム業界のオピニオンリーダーの地位を確立。日本で随一のゲームアナリストと呼ばれる。
現在、ゲーム関連企業へのコンサルティング、ジャーナリストとして執筆、企業での講演、大学や専門学校での講義、テレビ・ラジオ番組でのコメンテーターとして活動中。
おもな著書に「ゲーム業界就職読本」や「ゲームの大學」(共著)、「ゲームの時事問題」など。
近年、ライフワークであるゲーム史をまとめた大型eラーニング教材「じっくり学ぶ。ゲームの歴史。」を開発した。
公益財団法人日本ゲーム文化振興財団理事。
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