ゲームに限らず、あらゆるプロダクトでAIの搭載や、機械学習、ディープラーニングの応用が始まりました。そこで、今最も注目の技術であるAIについて、その歴史や種類、採用例などを紹介します。
「AI」は「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」といわれています。AIと聞くと、コンピューターに人間並み(人間以上)の知能を持たせる、あるいはそのようなコンピューターそのものをイメージする人が多いでしょう。しかし、実際のAIは、これまで人間だけができたことを、コンピューターを中心とするシステムが実行できるようにしたもの全般を指します。つまり、人間が行っているあらゆる行為を代替できる可能性を秘めているわけですが、いまだ研究段階のものがほとんどで、本格的な利用が始まっている分野はそれほど多くありません。
1947年、ロンドンの数学学会の講義で、AIの概念が発表されました。発表したのは、第二次世界大戦中にドイツの暗号「エニグマ」を解読したことでも知られるイギリスの数学者、アラン・チューリング(Alan Turing)。「コンピューターの父」としても知られる彼の名は、コンピューター科学界のノーベル賞といわれる「チューリング賞」としても残っています。
1956年に開催されたダートマス会議(人工知能に関するダートマスの夏期研究会)で、初めてAIという言葉が使われました。このとき、世界初といわれる人工知能プログラム「Logic Theorist」のデモンストレーションも行われています。当時のコンピューターは四則計算などの計算しかできないものでしたが、Logic Theoristは数学の定理をあらゆる公理を用いて証明。AIの歴史はここから始まったといっても過言ではないでしょう。
その後、1950年代にはチェスのAIが作られたり、(AIに限らずコンピューター全般で使用される)プログラム言語が開発され、1960年代に入ると英語で人間と会話を行うプログラムが作られたり、AIの論理や手法について多くの発表がされました。しかし、1969年に「今から行うことに関係する事柄“だけ”を選び出すことが非常に難しい」という「フレーム問題」が提起され、思いもよらない事故や見知らぬ場所での戸惑いといった「人間にとっても難しいことは、AIにとっても難しい」ことが明らかになります。ちなみに、このフレーム問題については、約50年経った現在も解決には至っていません。
1970年代には、指示どおりにロボットアームを動かしたり、プログラムが科学的発見を行ったり、コンピューターの中で人工生命を育てるなど、AIの世界は進歩していきます。さらに1980年代には、自動運転の実現や人工株式市場の構築、遺伝的プログラミングやデータマイニングなど、現代に通ずる技術が続々と開発&発表されました。そして1997年、チェスのAIプログラム「Deep Blue」が、当時の世界チャンピオンに勝利するという快挙を成し遂げ、AIという言葉が世間的にも認識されていきます。
人間の神経回路を模した「ニューラルネットワーク」、大量のデータから規則性やルールを学んで推論や回答を行う「機械学習」、深い階層のモデルを作って推論を行う「ディープラーニング」などの研究が進んだ結果、AIは社会のさまざまな場所で利用されるようになっています。
これらのAIは、用途に合わせて2種類。また、機能によっても2種類の、計4つのタイプに分類することができます。
ある特定の作業領域に限って、すばらしいパフォーマンスを発揮するAIは、特化型(Narrow AI)に分類できます。2016年に囲碁の世界チャンピオンに勝った「アルファ碁(AlphaGo)」が代表的な存在です。
AGIと呼ばれる汎用型(Artificial General Intelligence)のAIは、作業内容や領域に関係なく、あらゆる分野・使途において人間以上のパフォーマンスを見せます。現段階では一例も実現していません。
人間のように物事を認識して、人間のように仕事をする強いAI。つまり、自意識を持ったAIのことをいいますが、現時点においては小説や映画など創作物の中にしか存在しません。
自意識を備えず、人間の知能の一部を代替する弱いAI。機械的に作業をこなすことができるので、現在最も多く実用化されているAIといえるでしょう。
特定の分野に強いタイプや機械的な作業を行うAIは、身近なところで活躍しています。いくつか例を挙げてみましょう。
スマートスピーカーは、テレビのCMなどで目にする機会が多いAI製品の代表的な存在です。人間が話しかけた言葉に反応(対応)して、家電のスイッチをON/OFFしたり、天候を教えてくれたり、音楽をかけたり、買い物をしてくれるもので、IoT(Internet of Things)を先取りしたアイテムともいえます。
ロボアドバイザーは、過去の膨大な取引データ、政治経済の動向、気候などを参照して、今投資すべき銘柄を教えてくれたり、さまざまな投資対象から最適なものを選んでくれたりするものです。これまでは自身で情報を集めて判断するか、ファイナンシャルアドバイザーなどの助言に従って行われてきた資産運用を、AIに託す(アドバイスを受ける)ものとして注目を集めています。
不動産の価値を、瞬時にはじき出すサービスも始まっています。感情を持たないAIが、多くの情報から客観的に資産価値を示すことが特長です。現在、不動産投資の判定を行う際に補助的に使われている段階ですが、データが蓄積されることでさらに学習し、投資家にとって強い味方になるかもしれません。
文書の自動生成システムは、リクルートが発表し、オープンソースとしたことでも話題です。言い回しや表現を学習したAIが、人が入力した文章の続きを生成してくれます。同社はほかにもディープラーニングに関するAPIを公開していて、「リストの生成」「画像の採点」「文書の分類」などを自由に利用できます。
AIは、ゲームでもさまざまな形で利用されています。ロールプレイングゲームで主人公の仲間が思い思いに行動したり、FPS(ファースト・パーソン・シューティング)でプレイヤーの行動を学習した敵が同じパターンで倒せなくなったり、アクションゲームで敵の出現場所や動きをプレイヤーの実力に応じて変化させるといった例です。
これらのAIは、ハードの機能として用意されたものではないので、開発者(おもにプログラマー)が作成する必要があります。ある局面において、どのように環境やキャラクターを変化させると効果的なのか。プレイヤーの心理をつかみ、それを自然に実現して新たな体験をさせる「ゲームAI」のデザインは、これからのゲーム制作において欠かせない要素のひとつになっていくでしょう。
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