ゲーム開発最前線 ― 【HTC VIVE新製品発表会】取材レポート:世界最先端のVRを知る

【HTC VIVE新製品発表会】取材レポート:世界最先端のVRを知る

2019年5月16日(木)、VRで世界の先端を走るHTCが、「HTC VIVE」の新製品やサービスをVR開発者に向けて発表する「2019 VIVE デベロッパー・デー」を開催した。
エンターテイメントだけにとどまらず、教育や医療、建築、販売業など、さまざまな分野での実用化が進んでいるVR。ゲームの世界でも一ジャンルを築きつつあるだけに、招待制のチケットは早々に満席になるなど、開発者の注目度が高かったイベントから、主要なトピックをご紹介します。

注目の新技術「アイトラッキング」

最初に登壇したのは、HTCでノースアジアのゼネラルマネージャーを務めるRaymond氏。同社が「HTC VIVE」発売後の約3年間で築いたものを「VR EXPERIENCE」と示し、これからもユーザーにVRで新しい体験を届けていく姿勢であることを強調しました。
その上で、2019年のキーワードに「アイトラッキング(視線の計測)」を挙げ、その技術を搭載した新製品「VIVE Pro Eye」を発売することを改めて発表(欧州と中国で2019年5月に発売開始)。さらに、(VRだけでなくARやMRを含む)XR体験ができる「VIVE Cosmos」も2019年中に発売されることを明らかにしました。

続いて、HTC NIPPON株式会社の児島全克社長が、「VIVE Pro Eye」の特長を解説。赤外線センサーを組み込んだレンズを搭載し、ユーザーが見ている部分だけをクリアに表示する「中心窩レンダリング」を行うことで、余った処理能力をほかに回すようにしたことなどを紹介しました。また、アイトラッキングについても「視線がコントローラー(カーソル)になる」「視点を補足する」ものとして、VR機器の新しい操作方法やUIにつながるであろうことを示します。

目の動きを、操作やキャラクターの動作に使えるようになると、ゲームの作り方が大きく変わり、新しいジャンルのゲームが生まれる可能性があります。VRならではのアイディアをさらに膨らませるためにも、ぜひ体験しておきたいテクノロジーといえるでしょう。

HTC VIVEの歩みと2019年の展望を語るRaymond氏と、新製品の特長をわかりやすく紹介した児島社長。

HTC VIVEの歩みと2019年の展望を語るRaymond氏と、新製品の特長をわかりやすく紹介した児島社長。

開発者にも利用者にもより良い環境を整備

2018年に登録タイトル(とユーザー)が3倍に伸長し、約1,000タイトルが増えたことで「タイトルを探す手間がかかる」ようになった現状を変える施策として、コンテンツストア「VIVEPORT」がサブスクリプションに対応することも発表されました。
これは、月額料金を支払うことで月に5タイトルを選べるというもので、より多くを求めるユーザーには全タイトルを無制限に利用できる「VIVEPORT Infinity」への加入がおすすめとのこと。なお、「VIVEPORT Infinity」は、ライバルであるOculusやMicrosoftのVRもサポートしています。タイトルをリリースする会社や開発者にとっても、ユーザーが使いやすい、タイトルを見つけやすい、そして多くの機種で使える環境になることは、歓迎すべきといえそうです。この発表をしたHTCのYusheng LEO氏は、「VIVEPORT」を「VRのNetflixのようにしていく」と力強く宣言。タイトルをリリースした会社や個人が売上に応じて受け取れるレベニューシェアの割合も、2019年中に80%まで高めるそうです。

「HTC VIVE」のソフトウェア開発キットである「VIVE SENCE」も整備が進み、新たに4つの機能が加わりました。「3DSP」で音響、「SRanipal」で顔認識、「Hand Tracking」で直感的なインタラクション、「SRWorks」ではXRのエンジンを強化。仮想現実とリアルの世界の融合を、高次元で実現できるようになりました。

これらの機能を説明したHTCのCota Lee氏によると、人間の右耳と左耳は環境によって聞こえる音が異なるそうです。それをVR上で再現するための「空間音響」として、どんな方向や角度から聞こえた音も再構築できるしくみを搭載。開発者にとってうれしいのは、この「3DSP」が「Unity」でダイレクトに扱えることでしょう。

最大のポイントであるアイトラッキングと「Hand Tracking」の概要が示され、来場者がカメラを構える場面。新技術への期待の高さがうかがわれます。

最大のポイントであるアイトラッキングと「Hand Tracking」の概要が示され、来場者がカメラを構える場面。新技術への期待の高さがうかがわれます。

VRを利用したサービスの実例紹介

「HTC VIVE」を使ったサービスの例として、VTuberの配信サービスを手掛けるカバー株式会社の谷郷元昭社長が登壇。日本で制作されたアニメ(字幕付き)が各国で放映された結果、声優の人気が上昇し、VTuberの需要が伸びている現状を説明しました。
しかし、VTuberの3Dデータの作成や、映像を制作するには費用や期間、ノウハウなどが必要です。そこで同社は、「HTC VIVE」を利用し、スマートフォンで手軽にライブ配信できるシステムを構築。ユーザー(視聴者)から投げ銭を受け取るしくみを導入し、誰もが手軽に番組を配信できるようになったそうです。

ARとVRを教育に応用している例として、台湾のShadoworks Studioの事例も紹介されました。「HTC VIVE」を利用することで、どこでも、いつでも、誰でも教育を受けられる上、内容にゲーム要素を盛り込むことで、遊びながら学習できる点が、従来の教育システムにはないメリットとなります。

VRとARを取り入れた台湾での授業のようす。ただ学習する、授業を受けるのではなく、ゲーム的なアプローチ(学ぶことでポイントが貯める等)を取り入れたのが好感触とのこと。

VRとARを取り入れた台湾での授業のようす。ただ学習する、授業を受けるのではなく、ゲーム的なアプローチ(学ぶことでポイントが貯める等)を取り入れたのが好感触とのこと。

今回、ゲームの実例は紹介されませんでしたが、いずれもゲームに近い、あるいは取り入れることができるものとはいえました。VRのゲーム開発を進めるときにも、例えばVTuberであれば宣伝・広報の一助として、あるいはゲーム内のキャラクターとして利用できそうです。
家庭用ゲーム機にも多く見られた教育ゲームは、トレーニング系のタイトルが大ヒットした例もあるジャンルだけに、VRという新しい場所を得て、新たなムーブメントを起こすかもしれません。また、リアルなキャラクターの動作を実現するために、VRで手軽になったモーションキャプチャーも選択肢のひとつといえるでしょう。VRのゲーム開発に携わる人にとって、今回のHTCの発表会は示唆に富んだ内容だったといえます。

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