ゲーム開発最前線 ― 【HTC VIVE開発者向けミートアップ】取材レポート②

【HTC VIVE開発者向けミートアップ】取材レポート②:VRで楽しむバーチャルイベント

HTC VIVE開発者向けミートアップ

2018年12月3日に開催された「VIVE JAPAN Developer Meetup」は、HTCのVIVE事業トップによる説明会、バンダイナムコアミューズメントによる基調講演に続き、午後からはテーマ別のセッションが行われました。
そのひとつに、VR上にバーチャルイベントの場「cluster」を提供しているクラスター株式会社の加藤直人社長が登壇。VRでバーチャルイベントを開催する際に起こりうる諸問題について、同社がどのように解決してきたのかを解説しました。また、企業がバーチャルイベントを開催するメリットも併せて紹介。新しいプロモーションの場として極めて有効であることを示しました。

自由度と技術的な限界のトレードオフが必要

初めに紹介されたのは、バーチャルイベントにおける技術的な問題でした。

・機器の増強には限りがない

VR上で行われるバーチャルイベントには、出演者(何らかの発表を行う人=パフォーマー)と観客(イベントを観に来た人=オーディエンス)が存在します。こうして集まった全ユーザーを律儀に同期していくとトランザクション(関連する複数の処理をまとめて扱うこと)がn2乗で増えていき、ネットワークが非常に重くなってしまうそうです。
また、clusterではパフォーマーとオーディエンスがアバターとして画面上に表示されますが、これをユーザーがカスタマイズできる=見た目を自由に変えられるようにすると、バッチ処理が効かなくなり、メモリはもちろん、CPU・GPUがパワー不足に陥ってしまいます。

・VR空間ではパフォーマーを優先

バーチャルイベントは、人が集まったほうが良い=話題性や収益等につながるものですが、ネットワークと描画に問題を抱えていることになります。clusterでは、これらを「チューニングと仕様」によって解決しました。ポイントとなったのは「パフォーマーとオーディエンスに明確な差をつける」こと。例えば、オーディエンス同士は会話ができないようにした上で、混雑時はオーディエンス(のアバター)表示数を制限。それでも描画の負荷がかかるときは、オーディエンスのアバターをデフォルト状態で表示するようにしました。

失敗例なども交ぜつつ、それでも「バーチャルイベントを開催したほうがいい」と語る加藤社長。Tシャツにも要注目!?  - VIVE JAPAN Developer Meetup 2018

失敗例なども交ぜつつ、それでも「バーチャルイベントを開催したほうがいい」と語る加藤社長。Tシャツにも要注目!?

・オーディエンスは理解してくれる

イベント参加者であるオーディエンスは、たとえ友人と参加していたとしてもイベント内で会話をすることができませんし、自分が作ったアバターが箱型の(いわば)つまらない姿になったり、時には表示すらされなくなったりしてしまいます。ユーザー体験的には満足度が下がる施策といえますが、ユーザーのネットワーク環境やPC等のスペックにも左右される現状において、一定の制限がかかることについては理解が得られているそうです。

VRが広く一般に普及した場合、こうしたバーチャルイベントで新作を発表したり、キャラクターのライブやトークイベントを開催したりする機会が増えることが予測されます。また、自社で場を作る必要に迫られる可能性もあります。
そのような場面において、「パフォーマーとオーディエンスの区別」で技術的な問題をクリアできること。そして、それを「ユーザーが受け入れてくれる」ことは、数多くのバーチャルイベントをこなしてきたclusterならではの発見といえ、イベント開催時に活かすことができるのではないでしょうか。

バーチャルイベントは事前の環境整備が重要

VRを利用したバーチャルイベントを成功させるには、主催者、パフォーマー、オーディエンスそれぞれに対するサポート体制の構築も大切です。

まず主催者(イベントを開催する企業)ですが、(バーチャルイベントが)新しい試みということもあり、VRやバーチャルイベントの知識が足りないことが多いとのこと。
そもそもVRやバーチャルイベントとはどのようなものなのか、展示会などの(リアル)イベントやインターネット放送とは何が違うのか、何ができて、何ができないのかなどを「事前体験会」などでレクチャーすることで、一定の理解を得られるそうです。

そして、配信や収録の環境についても、事前に知っておく必要があります。ネットワーク環境はもちろん、正確なモーションキャプチャーを行うために、「磁気」や「電磁波」の影響についても調べておきましょう。また、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に付属のマイクでは音声がきれいに録れないことが多いので、専用のマイクを用意しておくことも大切です。

VR専用のスタジオを用意できず、会議室やオフィスの一角を利用する場合は、置いてある電子機器に気を配るなど、数多くのバーチャルイベントを実施してきたノウハウを 公開。 - VIVE JAPAN Developer Meetup 2018

VR専用のスタジオを用意できず、会議室やオフィスの一角を利用する場合は、置いてある電子機器に気を配るなど、数多くのバーチャルイベントを実施してきたノウハウを 公開。

オーディエンスやパフォーマーとの関係を築く

当日のオペレーションでは、ほとんどのオーディエンスがバーチャルイベントの開始時間ぴったりに来場(ログイン)します。すると当然混み合うので、ネットワークが遅くなったり、描画処理などにも問題が発生したりするのです。これには、オーディエンスがイベント会場にすぐ入るのではなく、「エントランスで待機してもらう」「廊下を設けて会場まで歩いてもらう」のが有効とのこと。少し早くログインしてもらうことで、イベントに対する心構えを作れるそうです。

また、パフォーマーはHMDをかぶってしまうため、「カンペが使えない」こともネックになります。バーチャルイベントやHMDに不慣れなパフォーマーには、指示が(イヤホンを通じた)音声のみになることをあらかじめ伝え、リハーサルなどで流れを確認しておく必要があります。
そして、バーチャルイベントならではの動き方を覚えてもらうことも大事です。激しい動きはとらえきれないので、パフォーマーのテンションが上がったときは特に気を付けましょう。途中で離脱する「リスポーン」の方法を練習しておくことも忘れてはいけません。機器の不具合などの問題が発生したとき、スムーズにイベントに戻るために欠かせないからです。しかし、何よりパフォーマーに「気持ち良く演じてもらう」ことが第一ということも強調していました。パフォーマーが不安を感じると、それはダイレクトにオーディエンスに伝わり、イベントの満足度が低下してしまいます。

バーチャルイベントの開催が決まったときは、関わるすべての人と事前にしっかりコンタクトをとり、万全の準備を整えるようにしましょう。

サポートのシミュレーションとフロー構築も必須

バーチャルイベントでは、オーディエンスへのサポートがすべてリモートで行われることになります。clusterでは過去の事例から、次のような問題が発生すると考えているそうです。

<バーチャルイベントで発生するおもな問題>

  • 機器や配信環境の不具合
  • ログインできない
  • 入室してくれない
  • 迷惑行為をする
  • VRのサービスとわかっていない

こういった事態を避けるには、イベント当日の主催者、パフォーマー、オーディエンスそれぞれの流れをフロー化。問題が発生しそうな部分について、解決策を準備しておく必要があります。また、バーチャルイベントのチケット購入者に、SNS(おもにTwitter)のダイレクトメッセージを通じてコミュニケーションをとることも効果的です。その際のやりとりをマイルドにするために、かわいらしいキャラクター(くらすたーちゃん)を立てたことも奏功したそうです。

フローの作成は、ゲーム開発者(特にプランナーやプログラマー)であれば専門領域ですから、特に問題にはならないでしょう。また、自社のイメージキャラクターやゲームに登場するキャラクターでSNSアカウントを作り、窓口にすることも可能です。ユーザーといい雰囲気を醸成しながら、当日までに発生する諸問題の芽を摘み、イベント後もフォローし続けることで、次の開催に結び付けたり、自社やタイトルのファンを増やしたりすることができるのではないでしょうか。

事前のシミュレーション、問題になりそうなことの洗い出し、機器の確認といった事前の準備に加え、パフォーマーやオーディエンスと良い関係を築くことの大切さを語る加藤社長。 - VIVE JAPAN Developer Meetup 2018

事前のシミュレーション、問題になりそうなことの洗い出し、機器の確認といった事前の準備に加え、パフォーマーやオーディエンスと良い関係を築くことの大切さを語る加藤社長。

バーチャルイベントの良いところ

加藤社長は、最後にバーチャルイベントの良いところを紹介してセッションを締めくくりました。会場を借りて行うリアルイベントと比べると、次の4点が優れているそうです。

1 人件費が抑制できる

誘導や警備の人員が不要。設営や撤収も必要ない。演出や仕掛けに携わる専門家もいらないが、凝った内容にしようとすると、準備(作成)コストがかかる点には注意。

2 場所や機材の費用が不要

リアルイベントの場合、事前に会場を予約することになりますが、人気のある会場の場合はキャンセル待ちになることもあります。また、設営や撤収のために会場の前後日を押さえる必要があるが、バーチャルイベントなら欲しいときに欲しい広さの会場を用意できる。
カメラや照明などの機材(スタッフ)も不要。演出が増えたり変わったりしたときも実装コストのみで済む上、トライ&エラーもしやすい。

3 演出がやりたい放題

パフォーマーやオーディエンスの安全性を無視できるので、「空を飛ぶ」「花火を打ち上げる」「分身する」「巨大化」といった、現実では難しい演出が可能。イベント会場自体を動的に変化させても良い。

4 ライブやトークショーとの相性がいい

VR=ゲームと考えている人も多いが、実際はユーザーに「体験を提供」するライブやトークショーといったイベントと相性がいい。また、VRのゲームは3D酔いも発生するが、パフォーマンスを観るイベントではその心配はありません。

大規模な展示会への出展、販売店などでの店頭イベント、新作発表会など、ゲームに関するリアルイベントはたくさん開かれています。しかし、いずれも多くの時間と人的資源、資金を投じる必要があることも事実。
しかし、VRを使ったバーチャルイベントであれば、それほどリソースを割かずに開催することが可能です。自分たちが作ったゲームのプロモーションの場として、開発の現場から広報サイドに提案してみてもいいかもしれません。

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