ゲーム開発最前線 ― HTC VIVE開発者向けミートアップ

【HTC VIVE開発者向けミートアップ】取材レポート①:VRは採算性で採用される時代へ

HTC VIVE開発者向けミートアップ

PlayStation VR、Oculus Rift/Goとともに世界のVR市場をリードしている「HTC VIVE」の今、そしてこれからを開発者向けに紹介する「VIVE JAPAN Developer Meetup」が、2018年12月3日に開催されました。

会場では、各種VRソフトウェアの体験会はもちろん、国内のVR事業に携わる登壇者によるセッションが数多く行われ、開発を進めている/導入を考えている企業や開発者にとって、内容の濃い一日となりました。イベントは、HTCでVIVE事業を推進するレイモンド・パオ(Raymond Pao)氏と、トニー・リン(Tony Lin)氏の講演から始まります。

HTC VIVEが、さまざまな場所で使われるようになったこと。これまでは「目新しさ」から導入されていたVRが、企業や団体にとって採算の合うプロモーション手段となってきたこと。ゲームについても、HTC VIVEであればプラットフォームを越えた移植が容易なことなどが語られました。

VR=ゲームだけではない

レイモンド氏は、初めに「デベロッパーが最も重要なパートナー」であると訴えます。これは、(ハードの値段が高かったことも併せて)VRの普及にやや停滞感が見られた2017年は、コンテンツ不足が原因であったこと。しかし、2018年には多くのデベロッパーの参入で解消しつつあり、VRのソフトウェアもゲームをはじめ、教育やヘルスケア、映画などのエンターテインメントなどへと大きく広がったことを指しての言葉でした。

HTC VIVEだけでなく、VR市場全体が世界で大きく伸びていること。その成長は今後も続き、さまざまな分野でVRが使われるようになるであろうことを示すレイモンド氏。  - VIVE JAPAN Developer Meetup 2018

HTC VIVEだけでなく、VR市場全体が世界で大きく伸びていること。その成長は今後も続き、さまざまな分野でVRが使われるようになるであろうことを示すレイモンド氏。

その一例として、医学生が本ではなく、VRでより実態に近い解剖学を学ぶ「Incubate Eco-System」、マクラーレンと開発したVRレーシングシミュレーターの「McLaren Shadow esports Program」、VRでショッピングモールを巡れる「VIVE LAND」、美術館と提携して作品を閲覧したり、ユーザーが作品を投稿できたりする「VIVE ARTS」のほか、中国の映画監督がVRで作品を製作するプロジェクトなどが紹介されました。
いずれも、現実世界と変わらぬ立体的でリアルな映像を体感できる「VRならではのプロジェクト」。日本ではVRと聞くと、ゲームや映像作品が真っ先に挙がりますが、世界では他ジャンルに拡大を見せていることがわかります。

さらに、世界のVR市場が2018~2022年には毎年60%に達する成長予測があることを紹介。それを実現するためにも、ハードウェアパートナーの増加と、(ソフトウェアの)デベロッパーの協力が不可欠であると語ったレイモンド氏は、HTC VIVEのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を19.99ドル(US)で3ヵ月間使えるサブスクリプションモデル「VIVEPORT」の導入や、賞金50万ドル(US)というVR作品のAward開催などで、強力に後押しする考えを示しました。

なお、日本国内では、(懸案となっている)Wi-Fiアダプターが使えるようにすることが大切であり、来る5G(第5世代移動通信システム)によって、VRのパフォーマンスやユーザー体験の向上が期待できることを語って、講演を締めくくりました。

実際に、HTC VIVEを使っている現場の映像を交えて活用例を紹介。国内でも、ゲーム以外の分野で使われる場面が増えるであろうことを示唆した。 - VIVE JAPAN Developer Meetup 2018

実際に、HTC VIVEを使っている現場の映像を交えて活用例を紹介。国内でも、ゲーム以外の分野で使われる場面が増えるであろうことを示唆した。

異なるプラットフォームへの移植を簡易化した「VIVE WAVE」

アーケードゲームのもうひとつの特徴として「ロングセラー」化が挙げられます。

続いて登壇したのは、HTCでVIVEの技術面を取りまとめているトニー氏。まずは、PCやスマートフォンを必要としないスタンドアローン型のHMD「VIVE FOCUS」のスペックを簡単に紹介しつつ、セールスプロモーションやインテリアデザインなどで、多くの企業に採用された実績を解説しました。 中でも、VIVE FOCUSを100ヵ所以上の営業所に設置している台湾のトヨタでは、都市部、渋滞中の道路、高速道路という3つの走行パターンシミュレーション(雨などの天候変化も含む)を来店者に体験してもらい、販売に結び付けているそうです。現実の道路や車の挙動をリアルに再現するドライビングシミュレーターは、(前述のマクラーレンのものも含め)エンターテインメント性を付加することでゲームとしても成立しそうです。

トニー氏は、具体的な活用例を紹介。トヨタやマクラーレンなど、日本人になじみ深い企業とのプロジェクトはいずれも大成功で、現在も継続中とのこと。 - VIVE JAPAN Developer Meetup 2018

トニー氏は、具体的な活用例を紹介。トヨタやマクラーレンなど、日本人になじみ深い企業とのプロジェクトはいずれも大成功で、現在も継続中とのこと。

続いて紹介されたのは、VRブランドの調査結果(2017年)。それによると、世界には400以上のVRブランド(プラットフォーム)が存在し、標準化が進んでいない現実が明らかになりました。それはつまり、複数のハードに向けてVRソフトウェアを開発する場合、それぞれのフォーマットに合わせた移植作業が発生することを示します。必然的に開発費を回収するラインも高くなるので、複数のVRハードに同じゲームをリリースすることは難しくなります。

この問題をクリアするために、HTCが用意したのが「VIVE WAVE」という開発環境です。異なる プラットフォームに対応し、主要なエンジン(UnityやUnreal Engineなど)のプラグインを用意。これにより、OSがAndroidであれば、複数のVRハードに対して同一タイトルをリリースできるようになりました。
トニー氏は、「Steam」から「Mobile」へのプラグインAPIの移植がわずか2時間で済んだ実例を紹介。「3DoF」から「6DoF」(※)への変更も、専用のアプリケーションによって容易に行え、CPUへの負担が大きくなりがちな「DrawCall」の減らし方などのパフォーマンス最適化についても問題がないことを強調。移植にかかる時間を大幅に短縮できるVIVE WAVEの導入を、来場者に強くアピールしました。

Steam(PC)からMobile(スマートフォン)への移植例を、具体的な数字と画面の対比で説明。VIVE WAVEを導入するメリットが強調されました。  - VIVE JAPAN Developer Meetup 2018

Steam(PC)からMobile(スマートフォン)への移植例を、具体的な数字と画面の対比で説明。VIVE WAVEを導入するメリットが強調されました。

※VRの自由度のこと。3DoFは、HMDをつけた頭の傾きや回転を感知します(前後左右+上下動)。6DoFは、これに体の移動の感知が加わります。

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