ゲーム開発最前線 ― 【JAEPO2019】取材レポート

【JAEPO2019】取材レポート:アーケードゲームの今と未来を知る

2019年1月25~27日にかけて、千葉県の幕張メッセで「ジャパンアミューズメントエキスポ2019」(以下、JAEPO)が開催されました。アーケードゲーム、メダルゲーム、プライズマシンはもちろん、筐体や操作機器(ジョイスティックやボタンなど)、両替機といったオペレーター(ゲームセンター)向けの物まで、アミューズメント施設に関わる企業が集う巨大な展示会です。

2019年1月25~27日にかけて、千葉県の幕張メッセで開催された「ジャパンアミューズメントエキスポ2019」

最近のゲームといえば、PCやスマホ、家庭用ゲーム機が思い浮かび、アーケードゲームは強いインパクト(かつての格闘ゲームや音楽ゲーム、プリントシール機のようなムーブメント)を残せていない印象もあります。しかし、小さい画面や限られた性能、狭いスペースを前提に考えるのではなく、広い空間を活かし、新しい技術をわかりやすく落とし込んでいくアーケードゲームの最前線は、ほかのゲーム開発に携わる人にとっても見どころは多く、毎年チェックしておきたいイベントのひとつといえるのではないでしょうか。

出展社とアイテムで見る今後のアーケード業界

1990年代までのアーケード=ゲームセンターのゲーム(ビデオゲーム)といえば、各社が独自のシステム基盤(プラットフォーム)を作り、その時々の最新技術を採り入れて画面の美しさや表現、操作方法、音源までのすべてを競い合う場所でした。そして、そこから生まれた新しいゲームや表現手法が、家庭用ゲーム機に「移植(という名のダウンサイジング)」されていくという流れがあり、アーケードゲームこそゲームの頂点と考える人も多かったのが事実でしょう。しかし、2000年代に入ると、技術の粋を集めた職人的なゲームよりも「オンライン対戦」や「トレーディングカード」を採用した作品がインカム(収入)の柱に代わり、筐体の大型化が進みました。その後、2010年頃から音楽ゲームの人気が再燃。アミューズメント施設の一角を占めるようになります。

現在のアミューズメント施設を支えているのは、「オンライン」「トレーディングカード」「音楽ゲーム」に、「プリントシール機」「プライズマシン」「メダルゲーム」を加えた6つのキーワードです。そして、それらを開発・運営できるのは、一部の大手企業に限られます。小さな開発会社がアイディア勝負で作品を送り込み、新風を巻き起こすことは難しいでしょう。つまり、今のゲームセンターは、いわゆる「ビデオゲーム」が主役ではなくなっているのです。そのことは、今回のJAEPOに出展した企業やゲームを見ても明らかですし、街のアミューズメント施設に足を運べばその傾向がはっきりわかるでしょう。

店とユーザーに長く愛される作品づくりが重要

アーケードゲームのもうひとつの特徴として「ロングセラー」化が挙げられます。

過去のビデオゲームは、システム基盤上のROMを交換することでゲームを変えることができました。ROMの価格は高くても数十万円程と、人気が出ればすぐに回収できるレベルでしたから、オペレーターはユーザーの反応を見てゲームを入れ替えることが可能です。しかし、筐体の大型化によって販売価格が上がり、簡単にゲームを変更することは難しくなりました。
また、オンラインで全国のユーザーと対戦できるシステムの構築と維持にはコストがかかるので、メーカーとしても同じゲームを長く置いてもらうことが重要になっています。さらに、トレーディングカードの要素があるゲームの場合、ユーザーは集めたカード資産を長く活かせることを望みますから、同じゲームがずっと遊べることも大切です。これら、アーケードゲームを取り巻く環境が、ロングセラーを生み出す原動力となってきました。

ロングセラーを生み出してきたセガのゲームづくり

今回のJAEPOには、各社の人気タイトル=ロングセラーゲームの最新作(最新バージョン)がいくつも出展されています。特に、2019年1月25日のセガ・インタラクティブブースで行われた開発者によるトークイベントで、ロングセラーの大切さを再確認させられました。登壇した「StarHorse4」プロデューサーの佐藤直行氏と、「maimai でらっくす」の総合ディレクター・小早川賢氏の言葉を紹介しましょう。

最新作について聞かれた佐藤氏は、「ユーザーの意見に真摯に応える」「コラボでユーザーの斜め上を行く」と回答。競走馬を育成してほかのユーザーの持ち馬と競わせる「StarHorse」シリーズにおいて、長く遊び続けてくれるユーザーを大事にしていることを明らかにしました。そして、ユーザーの声から「座席のリクライニング」「フットレストの設置」「スマホなどのUSB充電機能」「ボイスチャット」「マウスでの操作」を実現。さらに、メダルを「完全電子化」したことで、ゲームを遊びながら「生活できる」環境を構築したそうです。

一方の小早川氏も、初めは苦戦した「maimai」シリーズを、ユーザーとオペレーターの声を聞きながら少しずつ育ててきたこと。音楽ゲームを作り続けてきたスタッフの声も大切にしていること。その結果として、最新作ではメンテナンス性も高く運営しやすい、カジュアルで長く遊べる筐体に仕上がったことを報告しました。

また、両氏はユーザーの「SNSへの投稿」や「コミュニティの促進」も重視していると話すなど、最新作が長く遊ばれる=ロングセラーを目指すことも明らかにしています。ゲームの開発者、オペレーター、ユーザーが三位一体となって盛り立てることが、これからのアーケードゲームにとって重要であることは間違いないでしょう。

この日の質問者はセガ・インタラクティブの杉野行雄社長。トップからの鋭い質問に答える佐藤氏(左)と小早川氏。

この日の質問者はセガ・インタラクティブの杉野行雄社長。
トップからの鋭い質問に答える佐藤氏(左)と小早川氏。

クリエイターに求められるものは増えていく

VRなど、新しい技術をいち早く採用する動きも見られましたが、ゲームの原点に回帰するような作品が増えたことも、今回のJAEPOの特徴といえるでしょう。タイトーのブースをはじめ、各所に置かれて来場者に注目されていた「arcade PONG-DX」は、あらゆるゲームの原点(のひとつ)とされるATARI社の「PONG」を現代風に再現したもの。
また、体感型の音楽ゲームのブームを生み出したKONAMIの「DanceDanceRevolution」は、20周年を記念したアニバーサリーモデルを出展。歴史あるシリーズの新たな一面をユーザーに問う形となりました。過去作を知っている層に認められ、まったく知らない世代にもアピールすることは、店頭での(見た目やPVなどによる)一見に懸けるアーケードゲームを作る上で、クリエイターが強く意識すべきものでしょう。

オペレーターや関係者の招待日にもかかわらず、大勢のプレイヤーでにぎわっていた「DanceDanceRevolution 20th anniversary model」の筐体。 - JAEPO 2019

オペレーターや関係者の招待日にもかかわらず、大勢のプレイヤーでにぎわっていた「DanceDanceRevolution 20th anniversary model」の筐体。

また、近年のメダルゲームは、ほぼすべての機種に画面があり、メダルの投入や当たりに合わせて映像を流したり、ミニゲームを遊べたり、チャンスや大当たりの演出を行うようになっています。さらに、プライズマシンやキッズ向けの小型筐体でも、エフェクトを多用した映像がユーザーの気分を盛り上げてくれます。パチンコやパチスロが演出を強化することでファンをつかんだように、ユーザーに強く訴求する映像やエフェクトを制作することも求められているわけです。

同じくKONAMIブースで人気を集めていた「AnimaLotta アニマと雲の大樹」も、CGを使った多彩な演出が魅力。 - JAEPO 2019

同じくKONAMIブースで人気を集めていた「AnimaLotta アニマと雲の大樹」も、CGを使った多彩な演出が魅力。

ちなみに、これらの機種の映像のポイントとして、いわゆるハイエンドCGより、ドット絵が多い印象がありました。映像の再生に使用しているハードウェアが、筐体の適正価格に合った(性能を抑えている)物を採用しているためと考えられます。レガシーとまではいきませんが、少し前のハードウェアでより良い映像表現を実現できる技術を持っている人は、アーケード業界にもチャンスが広がっていることを認識したほうが良いでしょう。

ファンを裏切らないことがIPタイトルでは重要

ほかにも、バンダイナムコテクニカが、Xboxで人気のFPS「HALO」のアーケード版である「HALO FIRETEAM RAVEN 4 PLAYER」を、セガ・インタラクティブは2期目のアニメも話題の「けものフレンズ」を題材とする「けものフレンズ3 プラネットツアーズ」を、バンダイナムコアミューズメントは超人気ライトノベル「ソードアート・オンライン」のアーケード版RPG「ソードアート・オンライン アーケード ディープ・エクスプローラー」というように、アーケード以外で人気の作品を投入することによって、新たなユーザーを掘り起こす動きも見られました。

あまりの人気に開場から30分を待たずしてプレイ整理券の配布が終了した「けものフレンズ3 プラネットツアーズ」。 - JAEPO 2019

あまりの人気に開場から30分を待たずしてプレイ整理券の配布が終了した「けものフレンズ3 プラネットツアーズ」。

ファンの思いを壊すことなく、その世界を表現するためには、原作を深く知り、その魅力を画面やゲームシステムに落とし込む力が必要です。いわゆるIP(知的財産)を使用するゲームは、スマホや家庭用ゲーム機向けのものが大半ですが、アーケードゲームにも一定数存在しています。こうしたタイトルに携わることになったときに備え、他社のIPを使ったゲームを原作と見比べるなど、研究しておくことも必要になるでしょう。

©SEGA
©けものフレンズプロジェクト2G
©Konami Amusement

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