「Substance 3D Painter」と「Substance 3D Designer」とは、超現実的なフォトリアルが求められるゲームや映像の制作現場で、多くのデザイナーに使われている3DCG制作ツールです。特に前者は、「Photoshop」やゲームエンジンと同様の標準的なツールとなっています。両者の違いや使われ方、選ばれる理由を解説します。

「Substance 3D Painter」は、3DCGの3Dオブジェクト表面に色や質感をつけ、マテリアルを作るためのツールです。
家庭用ゲーム機やPC、スマートフォンの性能が上がり、多くのタイトルが3Dで制作されるようになったこともあり、ユーザーはゲームに現実世界さながらのリアリティーを求めています。そのため、3DCGの制作ツールは、光の反射などの物理現象をベースに計算を実施して自然な質感を表現できるPBR(Physically Based Rendering)マテリアル方式を採用するようになりました。
このPBRマテリアル方式の特徴として挙げられるのが、互換性の高さです。Substance 3D PainterもPBR方式に対応しており、制作したデータを別のツールで動かすことができます。Substance 3D Painterで作ったマテリアルをほかのツールでも使用できて、別のツールで作ったデータをSubstance 3D Painterで再加工できることは、同一プロジェクトに参加する制作会社や個人クリエイターの使用ツールに違いがあってもデータをやりとりしやすくなるといったメリットがあります。
PBRマテリアルの制作でカギとなるのが、マテリアルの構成要素となるパラメーターの設定です。主要なパラメーターには以下のようなものがあり、これらの設定によってマテリアルの質感が大きく変わります。
| 名称 | 内容 |
|---|---|
| Base Color(ベースカラー) | 光の影響を受けていない物質そのものの色 |
| Height(ハイト) | 物の表面の高さ |
| Metallic(メタリック) | 物が金属かそうでないか |
| Normal(ノーマル) | 物の表面の細かい凹凸 |
| Roughness(ラフネス) | 物の表面の触り心地(ツルツルしているか、ざらざらなのか) |
| Specular(スペキュラー) | 鏡面反射 |
Substance 3D PainterにはPBRのエラーをチェックする機能として「PBR Validate」というフィルターが用意されており、これを使えば制作したマテリアルのパラメーターが望ましい値の範囲内にあるかを調べることが可能です。
Substance 3D Painterは、多くのCG制作の現場で選ばれているツールです。その理由として、以下の3点が挙げられます。
Substance 3D Painterが選ばれる理由のひとつは、互換性の高さです。
マテリアルを作る前段階に必要な3Dモデルは、「Maya」や「Blender」などで制作されるのが一般的です。Substance 3D Painterは、これらのツールで作った3Dモデルのデータをインポートして、そのまま表面のマテリアルを制作することができます。
さらに、完成したマテリアル(を貼り付けた3Dモデル)は、「Unreal Engine」や「Unity」で使いやすい形でエクスポートできます。ゲーム制作の現場で使用されるさまざまなミドルウェアやゲームエンジン、以前からあるツールとの相性の良さは、Substance 3D Painterの特長です。
作業を効率化できる点も、Substance 3D Painterが選ばれている理由です。
多くの部分のマテリアルを自動でペイントできるため、作業効率を向上できます。使い慣れたペイントツールのような操作性とわかりやすいメニュー群もそろっていて、多くのクリエイターを惹きつける要因となっています。
また、マテリアルをペイントした結果をリアルタイムで確認できるため、別のツールで仕上がりを確認する頻度を減らすことが可能です。
加えて、膨大なアセットが用意されていることもポイントです。Adobeの「Substance 3D Assets」に数え切れないほどのアセットがあるため、例えばゲーム内で時間経過を表現したい場合でも、日中、夕方など時間に合ったマテリアルのベースを利用できます。ほかにも、鉄製の扉を作る場合、設置直後の新品の状態、使用感が出てきた時期の状態、錆だらけのボロボロの状態といった変化をアセットでそろえられます。そのため、クリエイターは自身の創造性を出したり、完成度を高めたりする作業に集中できるようになるのです。
マテリアルを制作できるツールはほかにもありますが、こうしたかゆいところに手が届く仕様がクリエイターの支持を得ました。
「Substance 3D Designer」は、3DCGのマテリアルを作り、さらにテクスチャーにアウトプットできるツールです。大きな特徴として、一つひとつの処理やその流れを視覚的に管理するノードベースで行える点と、一定のルールに従って作業を自動的に行うプロシージャルな生成ができる点が挙げられます。
ノードベースにしたことでマテリアルの制作過程が可視化されて管理がしやすくなったほか、別の制作会社やクリエイターが作ったものでも構造などが理解しやすくなりました。また、一度作ったノードをほかのマテリアル制作に使い回せることが、制作時間の短縮につながっています。
一方のプロシージャルな生成は、同じようなマテリアル(テクスチャー)を大量に制作する際に役立ち、例えば自然の地形や建物の壁面のように、同じようで少しずつ違う物を作る作業を効率化できます。
数多くのノードが用意されているため、デザイナーのさまざまな要求に応えられますが、その一方で覚えることも多い点は使い手を選ぶ一因となっています。同じAdobeの「Photoshop」などと操作感が近く初心者でも取り組みやすいSubstance 3D Painterと比べると、Substance 3D Designerはややハードルが高いツールといえるかもしれません。
Substance 3D Designerのマテリアル(テクスチャー)制作の基本となるノードは数百種類あります。バージョンアップのたびに新しいものが加わり、現実世界から想像上の世界まで、さまざまな物のテクスチャーが作れるようになりました。ノードにはアトミックノード、ライブラリノードといった分類があり、それぞれ異なる役割を持っています。基本となるアトミックノードから代表的なものを紹介します。
| 名称 | 内容 |
|---|---|
| HSL | 色相、彩度、明度を設定する |
| FX-Map | 任意の図形を自由に並べる |
| エンボス | エッジ部分に光と影を描画する |
| 距離 | 物の表面の細かい凹凸 |
| ブラー | 物の表面の触り心地(ツルツルしているか、ざらざらなのか) |
| 変形2D | 鏡面反射 |
| ワープ | 画像を歪ませる |
Substance 3D Designerは、多くのCGデザイナーに支持されています。その理由としては、主に以下の2点が挙げられます。
Substance 3D Designerは、規則性がある大量のテクスチャーの作成に向いているため、3DCGデザイナーの中でも特に背景デザイナーに使われることが多いツールといえます。ベースとなるマテリアルをひとつ作れば、あとはパラメーターを調整するだけで異なる表情のテクスチャーを生成することが可能です。
例えば、レンガでできた壁の場合、整然と並んだベースをもとに「欠けているレンガが混じっている」「苔が生えている」「焼成具合が異なる」といったバリエーションを簡単に増やせます。
ほかにも、以下のような点で大量のテクスチャー制作時に快適な作業を実現できる点が、Substance 3D Designerへの支持につながっています。
作業内容の確認と調整がしやすい点も、Substance 3D Designerが指示される理由のひとつです。2025年に発表されたバージョン「15.0」で新しいレンダラーが搭載され、リアルタイムでシャドウと透過表現の確認ができるようになり、ステージのレイアウト作成などで全体を見ながら色味などの調整を加えられるようになりました。
さらに、Substance 3D Designerでは、制作済みのマテリアルを使って質感を比較することも可能です。制作したマテリアル(テクスチャー)をほかのツールで読み込んで確認する手間を減らせるようになるため、ステージやマップの環境を設定するレベルデザインが格段に行いやすくなっています。
Substance 3D PainterとSubstance 3D Designerは、ほかのツールと連携することでより快適な制作環境を実現できます。
例えば、Substance 3D Designerで制作したマテリアルは、Substance 3D Painterで開くことができます。こうしてエクスポートしたマテリアルはパラメーターも同じように動作するため、ツールを換えて微調整を加えることも可能です。
また、多くのデザイナーが使用しているツールとしてPhotoshopがあります。これは2Dのイメージを制作するツールですが、初めにPhotoshopでもとになるイメージを編集し、これをSubstance 3D Designerでマテリアルやテクスチャーに変換した後、最終的な仕上げはPhotoshopで行うといったAdobeのツール群を活かした制作手法も広く行われています。
もちろん、MayaやBlenderといった3Dモデル制作ツールとの連携も問題ありません。かつてはデータのやりとりに工夫が必要になったこともありましたが、その後、データ共有のハードルは下がりました。Unreal EngineやUnityといったゲームエンジンでも専用のプラグインが用意されており、Substance 3D Designerで制作したテクスチャーをゲームエンジン側で編集することも可能となっています。
多くのゲームや映像制作の現場で使われているAdobeのSubstance 3D PainterとSubstance 3D Designerは、元々Allegorithmic社が開発していた3DCG制作ツールです。
同社の設立は2003年で、2010年に「Substance Designer」をリリースするとゲーム業界と映画業界から注目を集めるようになります。その後、2014年に「Substance Painter」を発表し、Steamでの公開などの意欲的な取り組みも奏功し、ともに3DCG制作のメジャーなツールへと駆け上がっていきました。
Electronic Arts、Ubisoftといった海外の大手パブリッシャーにも導入され、「アサシン クリード」などのAAAタイトルの制作に使用されています。この躍進に目をつけたのが、2DCGの分野で強みを持っていたAdobeです。
Adobe は、2019年にAllegorithmic社の買収を発表。Substanceシリーズを同社のツール群に加えることで、3DCG制作の世界でも存在感を高めています。
AdobeのSubstanceシリーズとCreative Cloudの親和性は高く、CG制作をシームレスに作業できるようになった点はクリエイターにとってプラス要素の大きい出来事でした。2026年4月現在、看板である2ツールに加え、「Substance 3D Stager」「Substance 3D Sampler」「Substance 3D Modeler」などがラインナップされています。
ゲームにリアリティーを求めるユーザーの声に応えるべく、これからも3DCGでのゲーム制作はスタンダードとなっていくでしょう。
人々の娯楽が多様化しているほか、AAAタイトルの制作中止やメジャースタジオの閉鎖といった暗いニュースも増えている一方で、より便利で簡単にリアルな映像をつくりたいというクリエイターの欲求も止まることはありません。Substance 3D PainterやSubstance 3D DesignerをはじめとするSubstanceシリーズも進化を重ね、ほかのツールとの連携がスムーズになってきました。
最初のバージョンの発表から10年を過ぎ、巨大なパブリッシャーから小さな制作会社まで多くの3DCGデザイナーが使うようになったSubstance 3D Painterを核に、これからもSubstanceシリーズは世界中で使われていくことが予想されます。まだ使ったことがないクリエイターも、使い慣れたツールに固執せず、今のうちに“世界基準”にふれておくようにしてください。その経験は次のキャリアプランの拡大に役立ちます。
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